インドネシア共和国のパプア州の州都、ジャヤプラからチャーター機で1時間。ジャングルを切り開いた簡易空港から、バテロ族が暮らす村までは、舟で川を下ります。「ウルルンは子供のころから見ていた、ウルルンらしく狩りがしてみたい!」と向かったのは、俳優・大東俊介さん(22歳)。
    

 




* ロストワールド!! *

太平洋に浮かぶ、世界で二番目に大きな島、ニューギニア島。その島の西半分、インドネシア・パプア州北部を覆う広大なジャングルを流れるマンベラモ川。秘境の地といわれるマンベラモ川流域の一帯が、2005年12月、一躍脚光を浴びることになりました。ジャングルにあるフォジャ山脈を、アメリカ、オーストラリア、インドネシアの科学者らが調査した結果、ミツスイなどの鳥やカエルなど、数十の新種が発見されたのです。各国のメディアは、このジャングルを「地球最後のロストワールド」と大きく取り上げました。このフォジャ山脈のふもとに暮らしているのが、バテロ族です。

 

* バテロ族 *

バテロ族の男性は、木の皮で作った前掛けで下半身を覆い、つる草を円錐形に編んだトンガリ帽子を被っています。このトンガリ帽子は、部族同士で戦いがあった時代に被っていた兜の名残で、家族を守る男の象徴だと言います。バテロ族の男にとって、一番大事なのは、毎日家族のために食べ物を持って帰ってくること。おかずを獲りにジャングルに行きます。ヒクイドリ、ノブタ、カンムリバト、コウモリなどを捕る狩猟の達人。中でも彼らが目の色を変えるのが、マンベラモ川に生息する“クロコダイル”。大きいものでは、体長6mを越す巨大なワニです。雨季が終わり、川の水位が下がる時期は、ワニ狩りの最盛期。丸木舟に乗り込み、夜のマンベラモ川に漕ぎ出し、弓矢でワニを狙います。

    

 

*裏話*

バテロ族の村には、先祖の知恵を受け継ぎ、自然の素材を活かした様々な生活必需品があります。獲物を狩るための弓矢、サゴ椰子を濾過してでんぷんだけを抽出する装置。木の繊維を編んで、糸も作ります。中でも大東さんの目にとまったのは、火をおこす道具。陶器と、燃えやすい木の繊維を竹に打ち付けると、簡単に火をおこせます。大東さんも挑戦してみますが、なかなか上手くいきません。その様子を見ていたおばあちゃんがやってみると、一発で発火。悔しく思った大東さんは練習を重ね、何とかつけられるようになりました。別れの朝、大東さんは家族からたくさんのお土産をもらいました。おばあちゃんからのお土産は、大東さん念願の火をおこす道具と、「帰り道に食べなさい」と葉っぱで包んだ食べ物。帰り道、お腹が空いてきた大東さんは、みんなでおばあちゃんのお土産を食べようと葉っぱの包みを開けます。すると、中から出てきたのは、主食として食べていたサグ(サゴ椰子から抽出したデンプンのこと)。しかし、なんだか様子が違っています。よくよく見ると・・・、生のサグ。片や、火をおこす道具。大東さん、両方見比べてやっと気がつきました。「お腹が減ったらサグを焼いて食べるのよ」「そういうことか。おばあちゃん気持ちはありがたいんやけど…」パテロのやさしさに触れた旅でした。