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不動産業に厳しい年

2009年1月9日

  • 筆者 阿部和義

 09年は「乙丑」(つちのとうし)。12年前の97年は山一證券、北海道拓殖銀行、三洋証券が経営破たんした年である。今年も昨年末から波乱含みのことが続いてきた。12月にトヨタ自動車が営業利益で1500億円の赤字になると発表した。08年3月期には2兆2000億円の利益を上げた会社が一気にこれだけ業績が悪化したことに「トヨタショック」という言葉ができた。業績の悪化でトヨタ自動車は約1万1600人いた期間従業員を3000人まで減らす。こうした期間従業員は寮を出なくてはいけなくなった。

 派遣労働など非正規労働者は1700万人といわれる。こういった労働者が最初に解雇される。トヨタだけでなく、日本経団連会長の会社であるキヤノンでも派遣切りが行われた。既に就職している人だけではなく不動産業の日本綜合地所は既に内定した53人について内定取り消しを通知した。学生側は会社に対して内定取り消しを取り消すように交渉したが、1人100万円を出すことで話がついた、という。

 「派遣切り」などで仕事と住まいを失った人に対して、東京・日比谷公園には「年越し派遣村」ができてテントと食糧を用意した。足りない分については近くの厚生労働省の講堂を仕事始めの5日まで開放した。UR都市機構も社員寮から退去を余儀なくされた人を対象に賃貸住宅の空き室を割安で提供すると発表。2年間に限り通常の2割引で借りられる。09年3月末までに2000戸程度を確保する。

 神奈川県も県内の企業から雇用契約を打ち切られ社員寮を退去せざるを得ない期間従業員を対象に県営住宅の優先入居を08年12月26日から始めた。

 派遣切りにあった人たちに対して温かな手が差し伸べられている。しかし、不動産業界は日本綜合地所の内定取り消しに見られるように先行きは不透明である。08年にはアーバンコーポレーションやスルガコーポレーションなど上場企業が相次いで倒産し、今年も不動産業界は土砂降りの雨が降る、という見通しだ。そうした中で政府・自民党は不動産業界を活性化するために金融面と税制面から支援。金融面では不動産業界だけではないが資金繰りのため3兆円規模の「危機対応業務」を発動する。信用保証枠を20兆円に拡大し一般保証とは別枠で2億8000万円まで100%保証する。

 一方、税制面では土地の譲渡益について1000万円までは無税にし、住宅ローンについては過去最大の600万円まで税額控除する。

 こうした財政、金融面からの支援で不動産業界は立ち直るのかどうか?今年の一年は厳しい年になるのは間違いないであろう。

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