国土交通省は、扉が開いたまま内部のかごが動いてしまうなどのエレベーターの重大事故の際、警察の捜査とは別に発生直後から原因究明に取り組む方針を固めた。事故機を押収する警察当局の捜査に配慮して監督官庁としての調査を控え、原因究明が遅れた反省が背景にある。
扉が開いたままかごが上昇、下降する異常な動作は「戸開(とかい)走行」と呼ばれ、構造上、本来起きえない。しかし、昨年12月にも京都市のマンションで戸開走行を起こしたエレベーターと床の間に女性が挟まれ、骨盤骨折の重傷を負う事故があったばかりだ。国交省によると過去5年間、確認されているだけでも4度起き、死亡1人、重軽傷2人という被害があった。
姿勢の転換には、06年6月に東京都港区の公共住宅で住人の高校2年・市川大輔(ひろすけ)さん(当時16)がかごに挟まれて亡くなった事故がある。
警視庁は事故機を押収して業務上過失致死容疑で捜査を続けているが、2年半がたっても捜査の結論は出ていない。国交省が押収されたままの事故機を一度も調査しないことに不満を訴える遺族の声を受け、昨年12月3日に初の調査をしたが、事故原因はいまだ明確になっていない。
国交省は今後、戸開走行などによる事故では調査への協力を警察に要請し、了解が得られれば刑事責任の追及とは別の立場で、事故機の調査などを通じて技術的な要因を発生直後から調べる。他のエレベーターにも共通する問題点を把握した場合には迅速に全国一斉の対策を取るなど、調査の結果を生かす。
警察庁も、捜査に支障のない範囲で協力するよう都道府県警に指導する通達を昨年6月に出している。(松川敦志)