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特集:女性のための漢方セミナー 漢方、上手に活用し更年期を乗り越えて

 「女性のための漢方セミナー」(毎日新聞社主催、日本医師会・大阪府医師会・日本産科婦人科学会・日本産婦人科医会後援、株式会社ツムラ協賛)が昨年11月、大阪市北区の同市中央公会堂で開かれました。8回目となる今回のテーマは「気になる体の不調、これって更年期?」。女性の40代後半から50代前半の時期は更年期といわれ、多くの女性が不調に悩まされます。セミナーでは基調講演とパネルディスカッションで、漢方を使った症状の改善策などが具体的に紹介されました。(敬称略)

 ■パネルディスカッション

 司会・キャスター、毛利聡子さん/タレント・ハイヒールモモコさん/大阪市立大学大学院医学研究科講師・森村美奈さん/大阪大学大学院医学系研究科助教・有光潤介さん

 ◇心と体、総合的に診て

 毛利 テレビなどで活躍され3人のお子さんのお母様であるハイヒールモモコさん。体の方はいかがですか?

 モモコ 元気が売りですが、実はめまいと耳鳴りとホットフラッシュに悩んでいます。

 ◇障害、簡単そうで難しい見分け方

 森村 更年期障害の見分け方は簡単そうで難しい。自分でチェックできる方法もありますが、あくまで目安。気になる方は産婦人科や更年期外来を受診して適切な治療を受けた方がいいでしょう。

 毛利 更年期の症状と分からず、原因不明の病気と悩んでいる方も多いのでは?

 モモコ 私もめまいがひどかった時、病院によって「メニエール病」「ストレス」「自律神経失調」とか言うことが違うんで、「どれやねん!」って困りましたワ。

 森村 まず自分の症状に合ったところで診断を受け、次にどこで診てもらうか相談しては。いらいらやほてりなど典型的な更年期症状なら婦人科、気分がめいり、うつの恐れがあるなら心療内科、全身を診てもらいたいなら漢方がいいと思います。

 毛利 基調講演で個人の体質や症状を表す「証」という言葉が出ましたが、もう少し詳しく診断法を教えていただけますか。

 有光 先ほど申し上げた望診、聞診、問診、切診の「四診」で患者さんの全体のバランスを見ます。細かく話していくうちに、症状がはっきりしてくることもあります。

 毛利 本日、会場の皆さんにお配りしているチェックシートで自分の「証」を調べることができるんですね。(表参照)

 有光 漢方では大ざっぱに体力がある人、ない人、普通の人の三つに大きく分けます。胃腸が丈夫で暑がり、病気に対する抵抗力がある人は「実証」、胃腸虚弱で冷えが強く、弱々しい感じの人を「虚証」、中間の方は「中間証」です。

 毛利 モモコさんは一つだけ、「胃腸が丈夫」に○ですね。

 モモコ 年1回人間ドックに行ってるんですけど、すごいほめられます。「いい膵臓(すいぞう)ですね」って。いつも内臓だけはほめられます。

 有光 虚証に近い、ぎりぎりで中間証ですね。漢方は病名ありきではなく、症状によって薬が違ってきます。

 毛利 つまり同じ症状でも証によって処方される薬が違ってくるということですね。

 有光 漢方では「異病同治」「同病異治」といい、同じ風邪でも体力のあるなしや症状により、薬はまったく違ってきます。更年期障害も同じです。

 毛利 控室で事前にモモコさんを診察していただきましたが、結果はいかがでしたか?

 有光 脈を拝見すると水を取りすぎの傾向が感じられました。

 モモコ そう言われたんで今、のどがカラッカラですが、飲まずに我慢してます。

 有光 2点目は夜更かしで、若干うるおいが足りない脈をされていますね。舌の裏側の静脈が腫れており、血の巡りが悪いサインも出ています。漢方の立場からすると、水の取りすぎは冷えを引き起こし、胃腸の働きを弱めます。何事もほどほどが大切ですね。

 モモコ どれぐらいの量ならいいんですか?

 有光 飲み水なら1日2リットルを超えると飲み過ぎです。

 毛利 診察が終わり、今のモモコさんに適している漢方薬を教えてください。

 有光 水毒が多い状態を治すなら「当帰芍薬(しゃくやく)散」。血液の流れが悪い状態を改善するなら「桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん)」でもいいと思います。夜更かしが問題なら「滋陰降火湯」という薬があります。ただし、あくまでモモコさんの場合で、証や症状が異なれば薬も異なってきます。

 ◇保険がきく漢方、医師の7割使用

 モモコ 漢方は高いイメージがあるんですが。

 毛利 実は保険がきくんですね。漢方は誤解されている点がほかにもあるのでは?

 有光 一番感じるのは漢方薬をサプリメントのようにとらえ、指示した量を守らない患者さんがいることです。あくまで薬なので西洋薬ほどではありませんが、副作用がでることもあります。

 森村 医師の中にも漢方に否定的な方がいるのですが、最近では効果も科学的に立証されつつあります。

 毛利 現在、お医者様の7割が漢方薬を使うというデータもあるそうですね。

 ◇漢方の基本学ぶ、現在の医学部生

 有光 文部科学省の教育ガイドラインが改定され、現在ではすべての大学医学部・医科大学において漢方医学教育を行っています。

 森村 心も体も総合的に診る「全人的医療」という考え方が浸透しつつあり、この考えにぴったりな漢方を率先して学ぶ医学生が増えていますね。

 モモコ きょうは先生方の話を聞いて、更年期を乗り越えていけそうやと元気が出てきました。女はしゃべった方が元気になるらしいんで、愚痴はお友達にこぼしてスッキリして、信頼できるいいお医者様を見つけて楽しい人生を送っていきたいですね。

 ■基調講演

 ◇生活習慣病の予防効果も--森村美奈さん

 更年期とは閉経を迎える50歳前後の約10年間を指す。更年期障害は卵巣の働きの低下やストレスなど複数の因子がからみあっておきる。症状としては、ほてりやのぼせ、発汗、動悸(どうき)、疲労など。更年期うつ症状と関係が深い「空の巣症候群」というものもある。これは子どもが独立してしまい、気持ちが不安定になる状態を指す。

 この時期は信頼できる専門家に相談することが大切。主な治療法としてはホルモン補充療法や漢方療法、向精神薬の投与、心理療法など。ホルモン補充療法は女性ホルモンのエストロゲンを補うもので、のぼせや発汗などの症状に効果的。漢方療法は心と体全体をとらえて行う治療法なので、さまざまな症状や背景を持つ更年期障害の改善に向いている。

 更年期障害には「3大漢方」と呼ばれる処方がよく用いられる。当帰芍薬散は冷えがちで虚弱な人向き。不安が強く落ち込みがちな方は加味逍遙(しょうよう)散、体力はあるが頭痛や肩こりが強い方には桂枝茯苓丸が効く。漢方療法は個人の症状と体質に合った薬を処方し、食事の改善も指導してくれるので生活習慣病の予防効果も期待できる。更年期は人生の折り返し地点。無理せず体と心をリフレッシュさせてあげてほしい。

 ■基調講演

 ◇漢方はオーダーメード薬--有光潤介さん

 漢方は中国の伝統医学が日本に伝わり、独自に発達してきた医学。西洋薬の多くは化学合成された単一成分だが、漢方薬は複数の生薬で構成されている。「自然治癒力を高める」考え方や、個人の体質に合わせたオーダーメードの薬だということも漢方の大きな特徴だ。

 診察は肌や舌の色を見る「望診」、患者の訴えを聞く「問診」、声のはりや体臭をチェックする「聞診」、体に触れて診察する「切診」を行う。情報を分析して「証」という患者さんの状態を見極め、それにあった薬を処方する。

 漢方独特の物差しが「気・血・水」。疲れやすい、だるいなど更年期に多く検査でも原因が分からない「不定愁訴」には、漢方が効果的。漢方の考え方ではこれらの症状は気・血・水のアンバランスから起きる。「水をたくさん飲もう」という漢方からすると間違った健康法が流行している。立ちくらみや足のむくみは「水毒」という余分な水がたまっているのが原因だ。

 自分の舌に歯形がついているなら水分の取りすぎ。舌の裏側の静脈が腫れているようなら血の流れが悪い。

 漢方は西洋薬に負けない効果があるが、誤った使い方をすれば副作用が出ることも。上手に利用してほしい。

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 ◆あなたのタイプをチェック!【女性用】

 あなたは虚証?実証?中間証?

 (1)どちらかというと体力がある             2

 (2)寝汗をかきやすい                 -2

 (3)意欲、気力が充実し、積極性がある          2

 (4)胃腸が丈夫である                  2

 (5)夏バテしやすく、冬は風邪をひきやすい       -2

 (6)顔色がよく、皮膚につやがある            2

 (7)冷たい物を食べると下痢しやすい          -2

 (8)おなかに弾力があり、骨格ががっちりしている     2

 (9)食が細く、食べるのが遅い             -2

(10)月経初期に痛みが強く、血塊が出たり、経血量が多い  2

 合計点数0点以下→虚証 2~6点→中間証 8点以上→実証

 *表は目安

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 ■人物略歴

 ◇もうり・さとこ

 山口放送で記者兼キャスターなどを経て、96年テレビ大阪に入社しニュース番組などのキャスターを務めた。04年に退社後はフリーアナウンサーとして活躍している。

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 ■人物略歴

 ◇ハイヒール・モモコ

 大阪市出身。82年11月ハイヒール結成。84年ABC漫才落語新人コンクール審査員奨励賞、95年上方漫才大賞(ラジオ大阪)大賞。テレビ、ラジオ、映画など幅広く活躍。

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 ■人物略歴

 ◇もりむら・みな

 帝京大医学部卒。専門は産婦人科と女性の心身医療、医学教育。大阪市立大大学院医学研究科産科婦人科教室を経て、現在卒後医学教育学講師。

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 ■人物略歴

 ◇ありみつ・じゅんすけ

 愛媛大医学部、大阪大大学院医学系研究科分子病態内科学博士課程卒業。阪南中央病院などを経て、07年より大阪大大学院医学系研究科漢方医学寄附講座助教。

毎日新聞 2009年1月9日 東京朝刊

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