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【プレシニア記者がゆく これからの入門ガイド】

<続>これからの入門ガイド 競技かるた(上) 一瞬で勝負決する魅力

2008年12月12日

東京都文京区のかるた記念大塚会館で行われた名人位・クイーン位挑戦者決定戦

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 競技かるたと聞いて、まず思い浮かべるのは正月の「名人位・クイーン位決定戦」のテレビニュースか中継映像だろう。かるたは小倉百人一首。読み手が札を詠み始めたかと思ったら、もう畳の札が宙に飛んでいる。一瞬の速さ。まさに「畳の上の格闘技」だ。

 11月中旬、文京区大塚の区立かるた記念大塚会館で、社団法人全日本かるた協会が主催して、その挑戦者決定戦が行われた。名人位は第55期、クイーン位は第53期。それぞれの挑戦権をかけて、東西の代表が同時に対戦した。

 会場の広間には、約100人が詰め掛けた。競技前からぴーんと張り詰めた空気が漂う。

 和服姿の対戦者が100枚の中から取り札(百人一首の下の句)を25枚ずつ表向きに並べる。自分と相手を合わせて50枚。逆にいえば詠むのは100枚でも、残り50枚の札は畳の上にはない。ここに競技かるたの妙味と難しさがある。

 15分の暗記時間の後、競技に入る。挑戦者決定戦は3回戦で2回制したほうが勝ち。読み手は、前の読み札の下の句を詠んだ後、1秒の間をおいて次の札の上の句を詠む。ここが勝負の瞬間だ。二つの手が一瞬重なるように見えると、札が3、4枚飛んでいる。

 必ずしも詠まれた札そのものを取らなくても、その札を含む何枚かを一緒に競技線の外へ払い出してもいいのだという。

 目をこらしても初めはどちらが取ったのか分からない。時には対戦者で食い違う時も。話し合いが長引く時は審判に判断を仰ぐ。

 そのうち一音ですぐ取られる札とそうでない札があることに気づいた。この日の競技委員長の宮城県かるた協会会長の遠藤健一さん(61)が「一音で区別のつく札と、2音、3音と聞かないと区別できない札がある」と説明してくれた。

 例えば、紫式部の「めぐり逢(あ)ひて見しやそれともわかぬ間に 雲がくれにし夜半(よは)の月かな」の「め」で始まる歌は一枚しかないため、「め」を聞いた瞬間、「くもかくれ…」の札を取ることができる。それに対し、天智天皇の「秋の田のかりほの庵(いほ)のとまをあらみ わがころも手は露にぬれつつ」のように「あ」の音で始まる歌は16枚あり、「あきの」と3音めの「の」まで詠まれないと「わかころもては…」の札は取れない。

 1回の競技時間は約1時間。かなりの緊張と集中力を問われる。クイーン位の挑戦者決定戦は、東日本代表の葛飾区の主婦、池上三千代さん(36)=東京東会=が先勝の後、2回戦は、約10枚差もあった劣勢を終盤の粘りでひっくり返した。初のクイーン位挑戦となる池上さんは競技かるたの魅力について「競技をしている間は無心になって集中できる。それと相手との駆け引き。敵陣の札をうまく取れた時は爽快(そうかい)感がある」と話した。 (朽木直文)

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 <競技の主なルール> 100枚の札から無作為で選んだ各25枚の持ち札を表向きにし、一定のエリア内に上中下段に自由に並べる。札の位置は変えることができ、そのつど相手に伝える。敵陣の札を取った時と、相手がお手つきをした時は自分の札を相手に送る。札が先になくなった方が勝ちとなる。(電)03・3943・3100全日本かるた協会

 <現在の名人とクイーン> 10連覇中の葛飾区の会社員、西郷直樹さん(30)=早大かるた会=と、4連覇中の大学生の楠木早紀さん(19)=大分県かるた協会=で、来年1月10日、大津市の近江神宮勧学館で挑戦者と対戦する。

 

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