2009年01月09日 社説
[労働者派遣法]
製造業規制へ踏み出せ
労働者が職場を解雇され、仕事を失う。それだけでもたいへんなことだが、雇用問題は今や、通常の失業対策で対処できる段階を通り越してしまった。
職と住まいを同時に失った人たちが直面しているのは、生き死にかかわるような深刻な現実だ。
公営住宅への入居や公共施設の開放、ボランティアによる炊き出しなどで辛うじてその日その日を乗り切ってはいるものの、先の展望があるわけではない。
社会の一番弱い立場にある人たちが、集中的に雇用調整の標的にされ、自らの意思に反して職や住まいを失い、自力での生活再建が困難になっているのである。
ここぞというときに頼りにならないとすれば、政府は一体、何のためにあるのか。
当面の応急措置を進めることは大事なことである。だが、それだけでは問題の解決にならない。「雇用崩壊」を食い止めるための、非正規労働者を対象とした雇用政策の見直しが必要だ。
政府は昨年十一月、労働者派遣法改正案をまとめ、国会に提出した。「ワーキングプア(働く貧困層)の温床になっている」と批判の多かった日雇い派遣や、雇用期間が三十日以内の労働者の派遣を原則禁止すること、などが盛り込まれている。
改正案は昨年の国会では成立せず、今国会の大きな争点になっているが、「雇用崩壊」の事態に対処するにはあまりにも不十分であり、製造業への派遣規制などを盛り込むべきである。
労働者派遣法は一九八六年に施行された。当初、通訳など専門性の高い十三業務に限って派遣を認めていたが、九六年の法改正で二十六業種に拡大され、九九年に原則自由化された。
製造業への派遣が認められたのは二〇〇四年から。「労働市場の柔軟性」を確保することがねらいだった。
その結果、どのような事態が生じたのか。
派遣労働者の数は毎年、増え続け、不況になったとたん、真っ先に契約を切られ、雇用の調整弁として使われた。昨年十月から今年三月までに約八万五千人の非正規労働者が職を失う見通しだという。
経済界は、製造業への派遣を規制することに否定的である。「企業の雇用調整が難しくなる」「国際競争力が維持できない」「国内のメーカーが海外に生産を委託することになり、国内の雇用が悪化する」などの理由からだ。
自民、公明両党の中にも、規制が雇用情勢に悪影響を与えるのではないかとの懸念がある。
だが、製造業への派遣を現状のまま維持するのは、無策に等しいのではないか。とても国民の理解は得られないだろう。
労働者派遣法改正案を修正し、製造業への派遣を規制する。その方向で与野党が早急に修正協議に入ってもらいたい。経済団体、労働団体も非正規労働者の雇用安定、権利拡大のため一緒になって知恵を絞る時だ。
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