国民に不評を買う定額給付金をめぐる麻生首相の答弁がいかにも苦しい。政府方針や首相発言が二転三転するような「迷走政策」はやはり二次補正から削除すべきだ。問答無用の中央突破は避けよ。
定額給付金などを盛り込んだ第二次補正予算案の審議が衆院予算委員会で始まった。野党側は給付金を分離した修正案を提出。政府・与党との全面戦争へ、民主党の菅直人代表代行らが麻生太郎首相に集中砲火を浴びせたが、答弁は要領を得ず、聞いている側にはイライラ感が募った。
厳しい財政状況の中、二兆円もの巨費を投じるのである。問われるのは、何のための給付金なのかという政策の意義であるはずだ。政府の説明はさっぱり分からない。首相自身が給付金を受け取るか否かを明言できないのだから、何をかいわんやである。
首相はこう答弁した。給付金検討時は生活支援の色合いが強かったが、実体経済の悪化で現在は消費刺激の景気対策の面も出てきた。高額所得者も給付金を受け取って、ぜひ盛大に消費してもらいたい。ただし、自身の対応は二次補正が成立してから判断する−。
「人間の矜持(きょうじ)の問題」と、いったんは辞退を口にした首相である。おいそれと「もらいます」というのは、はばかられるにしても、支離滅裂な話だ。「必要な政策」と言い張るなら、菅氏が主張するようにリーダー自らが率先垂範して使うのが筋だろう。そう言い切れないところに、バラマキ色ばかりが目立つ給付金のあいまいな性格が浮かび上がる。
給付金の配布事務に当たるのは地方自治体だ。法令に基づいて実施すべきところを、法的根拠がないと民主党の仙谷由人氏に追及され、政府側が答弁に窮する場面もあった。所得制限の有無で閣内の意見が割れた末、判断を市町村に丸投げしたような政策には無理があるようだ。
むろん一人一万二千円が給付されれば家計のやりくりに助かるだろうが、それでも世論調査では多数が批判的だ。
こうした声に耳を貸さず、来週初めにも衆院通過を考えているとしたら、それこそ野党がいう「裸の王様」にならないか。野党は定額給付金部分を除いた二次補正は速やかに成立させるとしている。
首相の決断のときだ。なすべきは、納得しがたい答弁を続けることではない。
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