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【主張】欧州へのガス停止 露は供給国の責任果たせ
ロシアは年明けから隣国ウクライナへの天然ガス供給を停止した。
昨年末の価格交渉が決裂したためだが、一昨年の冬にも、同じ理由でガスを止めている。両国間の“天然ガス紛争”が再燃し、ウクライナ経由のパイプラインでガスを受け取る欧州諸国への供給も止まった。エネルギーを天然ガスに頼る比率が大きい地域は厳寒期を迎え、凍える事態に陥っている。
今回のような恫喝(どうかつ)を伴ったロシアの交渉手法は、旧ソ連から独立し、ロシアに同調しようとしない国家へのいやがらせの一環だと受け取られかねない。
経済と軍事の違いはあるが、昨年夏のグルジアへの侵攻をも連想させる。ロシアは国際社会での重要な資源輸出国として、節度ある姿勢を取り戻すべきだ。
ロシアは、一切の責任は価格面などで条件を受け入れないウクライナ側にあると強く非難し、一歩も引かぬ姿勢を示している。
しかし一方では、同じ隣国でも親ロシア的なベラルーシには格安の価格でエネルギーを供給している。欧州への統合を目指すウクライナとは異なる優遇ぶりだ。ロシアがエネルギーを政治的な武器としている証左でもある。
天然ガス産出国による国際カルテルともいうべき天然ガス版石油輸出国機構(OPEC)の創設にもロシアは動いたばかりだ。
経済危機が世界に暗雲を広げるこの時期にエネルギー資源を囲い込み、それを政治的な武器とする姿勢は、国際常識から著しく逸脱した行為であり、無責任との非難を免れないだろう。
ウクライナ側にも非はある。まずは、ロシアへの債務を期日内に支払うことだ。利権と汚職がはびこる複雑で不透明な天然ガスの売買制度についても、透明性のあるものに改革すべきである。
そのことが、ひいては同国が求める欧州への統合を早めることにもつながる。
ロシアからの欧州向け天然ガスはウクライナ経由が約8割を占める。ハンガリーやオーストリア、スロバキア、ブルガリアなど十数カ国では供給が停止し、一部の国では凍死者が出るなど、すでに危機的な状況にあり、非常事態宣言を検討している。
ロシアとウクライナは交渉を再開し、欧州側の調停活動も活発化している。両国は早急に合意をはかるべきだ。