ロシアとウクライナの天然ガス紛争が長引き欧州諸国に大きな影響が出始めた。紛争の原因はウクライナがロシアにガス代金を払わなかったり、今年のガス価格をめぐる交渉が決裂したことで、欧州諸国にはとんだとばっちりだ。
両国はちょうど3年前に同様の紛争を引き起こし、同様に第三国に迷惑をかけた。だが今回は紛争が長引き、より深刻だ。
ガス紛争の大きな背景として両国の政治的関係の悪化を指摘できよう。ロシアはウクライナが北大西洋条約機構(NATO)加盟をめざしていることに反対、最近では、ウクライナがグルジアに兵器を売り昨年8月の南オセチア攻撃に肩入れしていたとの批判を強めていた。ウクライナはロシアが天然ガスを使って対ロ関係を変えようと政治的圧力をかけていると反発する。
ガス紛争が単なるビジネスの問題でなく政治問題であることは否定できないだろう。
一方でウクライナの姿勢にも問題が多い。巨額のガス代金が未払いだった。代金未納のままで供給を続けよとは普通は言えまい。
価格の問題はパイプライン通過料金も絡んで複雑だが、ロシアのガス会社ガスプロムが当初提示していたのは国際価格以下で、そう不当とも思えない。
ガスプロムは交渉決裂を受けて1日にウクライナへのガス供給を停止した。欧州諸国への供給分は従来通りパイプラインに送っていたというが、その後はウクライナが欧州向けガスをかすめ取っている、いやそんなことはしていないと非難の応酬合戦が続き、揚げ句の果て7日には全面的に欧州向けの供給が止まってしまった。
EU(欧州連合)諸国は天然ガス消費量の約4分の1をロシアから輸入している。その約8割がウクライナを経由するパイプラインで運ばれている。それが止まったのだから影響が軽微にとどまるわけがない。
今年の欧州は寒く特に中欧、東欧諸国を中心に市民生活、産業活動に深刻な影響が出始めた。
ロシアには欧州にガスを供給し、ウクライナには欧州向けのガスを支障なく通過させる責任がある。
両国はただちに欧州へのガス供給を正常に戻さなければならない。当事者間の問題はそれから解決すればよい。
欧州諸国の窮状を人質にとって交渉することは許されるものではない。それでは両国とも国際的な信頼を失うだけだ。