百年に一度の経済危機ともなれば、政府の介入余地が高まる。実際、主要国ではこれまでの市場原理主義から、大きな政府による公的介入型にシフトしている。
米国では既に財政金融両面から、空前の危機対策がなされつつある。FRBは、買えるものは何でも買って流動性を供給するといい、この3カ月で資産が3倍近くに膨張。また7千億ドルを投じて金融機関や自動車メーカーを救済し、300万人の雇用創出対策として8千億ドルの景気対策を打ち出す。まさに重病患者への劇薬投与だ。
劇薬がモラルハザードなどの大きな副作用をもたらす懸念もあるが、当局は「先の心配より当面の危機回避」を優先する。これらを見て株式市場にもやや安心感がうかがえるようになった。
一方の日本。こちらも急速に景気が悪化し、政府の支援を求める声が強まっている。自動車を始めとする輸出の急減で11月の鉱工業生産指数は前月比8%もの記録的減少となった。これが正社員をも巻き込んだ大量解雇をもたらし、社会問題化する。しかし、今の政府の対応はピントがずれている。
失業の増加に対してはその場限りの失業対策提示にとどまる。むしろ株価の下落や円高に神経をとがらせ、昔ながらの市場介入で相場の買い支えをする。悲惨な景気指標が出ても株価が上昇する裏には、公的年金による「介入」が大きく寄与していた。円高で自動車などの輸出が急減すれば、今度は為替介入の声があがる。経済対策抜きの相場管理だけでは、本質的な解決にならない。
重病患者に痛み止めの介入ばかり投薬しても資源の無駄遣いになる。的確な経済処方箋(せん)を出せる体制作りが急務だ。(千)