ガザ市内から救急車を運転してエジプト側に負傷者を搬送した看護師ザクートさん(右)=ラファ検問所、バヘル・グラブ氏撮影
【ラファ(エジプト・ガザ境界)=田井中雅人】パレスチナ自治区ガザで、イスラエル軍による救急車への攻撃が相次いでいる。パレスチナ保健当局によると、空爆開始の先月27日から7日までに、11台の救急車が破壊された。医療関係者12人が死亡し、32人が負傷している。
国連が運営する学校への攻撃があった6日、ガザ最大のシファ病院の看護師オサマ・ザクートさん(24)は、同病院があるガザ市内から南端のラファ検問所まで救急車を運転し、負傷者をエジプト側へ搬送した。
「救急車も狙われている。命がけなんです」とザクートさん。イスラエルによる地上侵攻後の4日には、北部のジャバリヤ難民キャンプへ負傷者を迎えにいく途中の救急車が戦車の砲撃を受け、運転していた同僚らが死亡。中部でも同日、走行中の救急車がF16戦闘機の空爆を受け、同僚らが死亡したという。
「イスラエルは民間人を標的にしていないというが、我々が運んでいる負傷者の8割は女性や子供だ」とザクートさんは憤る。ガザの病院はベッドが足りず、あふれた負傷者を机や床に寝かせている。医薬品も全く足りず、イスラエルとエジプト双方の許可が得られた重傷者に限って、エジプト側の病院へ転送しているという。
ふだんガザ市内からラファまで30分ほどで着くが、6日の搬送は4時間かかった。ガザの中央を南北に貫く幹線道路周辺はイスラエル軍の攻撃が激しいため、西側の地中海岸沿いの砂利道を迂回(うかい)するためだ。振動が激しく負傷者の体にはよくないが、攻撃されたら元も子もない。南部にたどりついても、戦車が集結する検問所をいくつも通過しなくてはならない。