時機を逸して役に立たなくなるものの例えに「六日のアヤメ」という慣用語がある。「十日のキク」も用いられる。
今国会でようやく議論が本格化した総額二兆円の定額給付金は、役に立たなくなったとは言えないが、時機を逸した感は否めない。金融危機に端を発した急速な景気悪化に対する政府の緊急措置のはずだった。
生活に困る人のために、と麻生太郎首相が給付金の支給を打ち出したのは昨年十月である。遠い昔のように感じられる。当初から賛否両論はあったが、実施するにはスピードが求められた。
多くの人が遅くとも年末年始に間に合うよう政府が対応すると思っていただろう。首相も年内の支給を口にしていたが、関係する二〇〇八年度第二次補正予算案を提出せずに年を越した。
目的や効果が不透明と反対する野党の追及を受け、衆院解散に追い込まれるのを避けるためとされる。首相は今国会でも「家計への緊急支援」と意義を強調するが、説得力に欠ける。緊急支援なら、それにふさわしい素早い対応が必要だった。
民主党などは補正予算案から給付金の切り離しを要求する。「六日のアヤメ、十日のキク」となった感がある以上、ここは給付金を切り離し「二兆円あれば何ができるか」をしっかり議論した方が得策ではないか。