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ハンセン病:群馬の療養所入所者が証言集 「生きた記録、残したい」

 ◇湯治の帰り、生まれた赤子と収容された

 群馬県草津町の国立ハンセン病療養所「栗生(くりう)楽泉園」で、高齢化が進む入所者の受けた差別などの体験を聞き取る作業を大学教授らが行っている。年度内に50人分を編集し、証言集として製本する予定だ。入所者は「どのように差別され、人権が踏みにじられてきたのかを伝えたい」と期待している。【伊澤拓也】

 「草津温泉で湯治した帰りに、トラックが迎えに来て生まれたばかりの子供と一緒に入所したの」。園の一室で入所者の女性(89)が強制的に収容された経緯を振り返る。

 製本のきっかけは入所者の要望。要望を受けた群馬県が今年度予算に500万円を計上した。聞き取りは、01年のハンセン病国家賠償訴訟の元患者側勝訴を契機に発足した国の検証会で聞き取り調査を行った埼玉大教養学部の福岡安則教授(社会学)に依頼した。

 「隔離された人々は、置かれた立場で懸命に生きてきた。その姿を知ってもらうことこそが、差別や偏見の打破につながる」と話す福岡教授は国の調査を基礎に、製本へ向け8月から補足の聞き取りを始めた。出生から発症、入所して現在に至るまでの入所者の話を録音。福岡教授は分かりにくいなど気になった部分を質問する。

 現在163人の入所者の平均年齢は80歳を超える。証言集は50人を収録する予定だが、このうち16人は既に亡くなった。入所者で構成する自治会の藤田三四郎会長(82)は「私たちに残された時間は少ない。生きた記録を形として残し、後世に伝えたい」と話している。

毎日新聞 2009年1月8日 東京朝刊

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