2008年12月22日 (月)おはようコラム 「雇用危機 政治の責任」

(阿部キャスター)
おはようコラムです。国会では、野党3党が提出した雇用対策法案をめぐって与野党の対立が続いています。そうした中で、雇用のあり方や社会の仕組みそのものについて、もっと踏み込んだ議論を行うことも政治の責任ではないのしょうか。影山解説委員に聞きます。

Q:雇用のあり方と政治の責任。これはどう結びついているのでしょうか

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雇用の悪化はまず派遣労働者の間で起きている。それは、企業が、景気のいい時は増やす、悪くなったら減らす。そういう使い勝手のいい労働力として、非正規雇用を増やして来たからだが、そういうことがどうして可能になったかと言うと、政府が規制緩和を進めて派遣労働を製造業の現場にも広げて行ったからだ。だから、そういう方向にルールを変えた政治の側にも責任があるということをもっと考える必要がある。

Q:ルールをもう一度見直す必要があるということですか

みんなで痛みを分かち合って雇用を確保するような方向に変えるべきだと思う。そのためには雇用のルール、雇用法制を見直すことも必要だが、それと同時に、法律を超えた社会的な合意が必要になると思う。

Q:社会的な合意というのはどういうことですか

今の社会は、雇用については企業単位で考えることになっている。しかし、企業の枠内では、経営者は自分の会社の生き残りが最優先。労働組合も、正社員中心だから、これも自分たちの雇用や賃金を守ることが最優先になりがちで、結局、派遣社員がそのしわ寄せを受けることになる。そういう社会のあり方を変えるために、80年代のオランダでは、政府が仲介して、経営者は労働者の取り分を増やして、その代わり労働組合も賃上げを少し我慢する。それによって働ける人の数を増やすという社会的な合意を作り出した。これがそのまま今の日本のモデルになるとは限らないが、企業単位の労使交渉から排除された人たちも包み込むような社会的な合意作りを目指す必要があるという点では今の日本社会も同じではないか。

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Q:そういう合意はどうしたら出来るのでしょうか

それこそ政治の出番。労使交渉の枠を超えた、社会的な合意作りをリードできるのは政治の力しかない。ところが、国会では、当面の雇用対策をめぐってさえ、与野党のぶつかりあいになっていて、派遣切りを生んだ政治の責任を正面から考えようという議論があまりに少ない。そういう現実を見ると、政労使の社会的な合意作り以前に、雇用危機の克服には党派の違いを超えて取り組もうというという、政党間の合意作りがまず必要かも知れない。

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投稿者:影山 日出夫 | 投稿時間:08:22

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