偽ユダヤ人:No.1  

今、ユダヤ人と呼ばれる人々は、ユダヤ アブラハムとも何の関係もない人々

 

ユダヤ人作家アーサー・ケストラーの『第十三支族』はかたる。
 

真のユダヤ理解が国際化の鍵

ニつのユダヤ‐‐スフアラディとアシユケナージ

日本は国際化しなければならないと言われて久しい。しかし、国際化する前に日本人がまず国際人とならなけれぱならない。国際人になるためには世界のタプーを知らなければならない。日本に多くのタプーがあるように世界にはなお多くのタプーがあるが、そのうちの最も典型的なものはユダヤ問題である。アーサー・ケストラーの『第十三支族』は、そのユダヤ間題にユダヤ内部から光を当てたものである。ユダヤ人のユダヤ人による告白とでも言おうか。日本人は「ユダヤ人」というとすぐにキッシンジャーやプレジンスキーを思い出す。またある人はニューヨークのビジネスマン達を思い出すかもしれない。ョーロッパやロシアの歴史においても常にユダヤ人達が登場し、彼らを抜きにしては歴史を語ることも難しい。さらにはイスラエル建国の父と言われるベングリオン、そしてゴルダ・メイア・…。また日本のビジネスマンなら『第三の波』の著者アルビン・トフラー、『ジャパン・アズナンバーワン』のエズラ・ボーゲル、『二十一世紀は日本の世紀』のハーマン・カーン、そして『新しい現実』のP Fドラッカーなどを思い出すだろう。
 

そして日本人の多くは、ユダヤ人というかぎりは旧約聖書に出てくるアプラハム、イサグ、ヤコプの子孫、その血統を今も受け継いでいる人々と考えている。しかしながら、日本人が接しているユダヤ人は旧約聖書のユダヤ人とはまったく関孫のない人々である。それでは我々がユダヤ人と思っている人々はいったい誰なのか。実は彼らは今から一○○○年以上前、中央アジアにいた。そして血縁的にはユダヤ人とは何の関係もないカザール人であった(一般的にはハザールと表記することが多いようだが、本書ではカザールとする)。

本書が証明するところではあるが、彼らは一方ではキリスト教・ビザンチンから圧迫を受け、他方ではイスラム教・アラプの圧迫を受けた。普通ならどちらかに荷担してしまうものなのだが、彼らはそうしなかった。その二つの勢力の宗教の根本はユダヤ教である。カザール人たちはそのユダヤ教に国家を挙げて集団改宗したのである。彼らは改宗することによって自らを「ユダヤ人」と称するようになった。後に豪古軍、すなわち元軍が東からこの中央アジアの草原に進撃し始めた頃、ユダヤ人と称するカザール人たちはその難を避けて北へ移動していった。そしてロシア、ポーランド、ドイツなどに定住するようになったのである。一般の百科事典にはユダヤ人にはニつの種類があると書かれている。一つはアシュケナージのユダヤ人、もう一つはスフアラディのユダヤ人である。

アシュケナージ・ユダヤ人についてはロシア、ポーランド、ドイツなどの東ヨーロッパにコミュニテ
ィー(共間体)をつくっていた人々であり、ロシアのポグロムやドイッのホロコーストなどで迫害されて西ヨーロッパ、さらにはアメリカなどに移住していった人々だと書かれている。実はこのアシュケナージ・ユダヤ人こそ、もとはカザール人であった人々である。一方、スファラディ・ユダヤ人とは何か。一部は混血しているとはいえ、彼らはアプラハム、イサク、ヤコプの子孫なのである。一四九二年までスペインにいたが、カトリックの力が強くなり国外追放の憂き目にあい、スペインを後にして、主にはジプラルタル海峡を渡って北アフリカヘと杉動していった。
 

もちろんジプラルタル海峡を渡らずしてオランダやフランスの南部、さらにはプルガリア地方へ移った人々もいる。本当の血統を受け継ぐユダヤ人の多くは、北アフリカのアラプ民族の中に根を張ったのである。一九四八年五月、イスラエルが再建されるのであるが、その原動力となったのはカザール人すなわちアシュケナージ・ユダヤ人達であった。彼らが経済的、軍事的力をそれに注ぎ、世界的な彼らのネットワークを利用した。そして建国後、イスラエルに帰ってきたのがスファラディ・ユダヤ人達なのである。したがって、日本人はイスラエルに行かないかぎり、血緑的に正統なスファラディ・ユダヤ人を見ることはあまりない。ついでながら、イスラエルの人口の半分近くがアシュケナージ、残る半分がスファラディである。イスラエル建国までこのアシュケナージとスファラディは、まったく別の世界の中で生きていた。現にョーロッパなどにおいても、アシュケナージとスファラディではシナゴーグ(ユダヤ教会堂)もラビ(ユダヤ教師)もまったく別である。