先週末、初詣での客でにぎわう埼玉県の鷲宮神社に足を運んだ。日本武尊(やまとたけるのみこと)ともゆかりの深い関東最古の大社。そんな公式の由緒より、若い人には、女子高校生4人組のほのぼのとした日常を描いた人気アニメ「らき☆すた」の舞台と言った方が通りがよかろう。
▼同名の漫画を原作とするテレビ番組の放映が2年前。4人組の2人がこの神社の娘という設定からファンが訪れ始め、昨年の初詣で客は前年の2倍を超す30万人に。地元ではアニメをあしらった酒やせんべいも発売。今年も参拝客の列は商店街を長く延び、正月限定販売の関連商品には「売り切れ」の文字が並ぶ。
▼神の門前でアニメとはとまゆをひそめる向きもあろう。しかし日本の寺社は昔から庶民が娯楽に興じ、ストレスを発散させ、悩みや苦しみを和らげる観光と消費の場でもあった(安藤優一郎「観光都市江戸の誕生」)。屋台に茶店、見せ物の小屋。アニメ愛好家が増えればそれを採り入れるのはごく自然な流れだ。
▼英語や中国語、ハングルで作品への思いをつづった絵馬も目立つ。地元への経済効果は1億円を超すという。アニメなんてと考えていれば人も富も町を素通りしたはず。きょう仕事始めの会社も多い。頭を柔らかく、心を広く。ビジネスの種は無限にある。国の景気対策を待つより早道かも。