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’09世界を読む:/3 ロシア・プーチン首相

 ◇社会不安どう対応

 ロシア国営テレビは12月末、視聴者アンケートでロシアを代表する歴史的人物に選ばれた3人を発表した。1位はスウェーデン軍の侵攻を撃破した13世紀の大公アレクサンドル・ネフスキー、2位は帝政末期の強権政治家ストルイピン、3位が旧ソ連の独裁者スターリン。「強い指導者」を待望する今の国民意識が反映されている。

 この結果は強権統治でロシア社会の安定をもたらした前大統領のプーチン首相(56)が今も根強い人気を保つ理由に通じる。昨年5月、国家元首の座はメドベージェフ大統領(43)に譲ったが、その後もグルジア紛争や大統領任期延長など「重要な決定を行うのはプーチン氏」(ベドモスチ紙)との見方は根強い。12月の世論調査でも首相への信頼感は65%で、大統領の51%を上回った。

 大統領の任期を4年から6年に延長した憲法改正が、プーチン氏の大統領復帰への布石との説が消えないのもこのためだ。この見方に多くの識者は否定的だが、政治評論家のムーヒン氏が「2012年の次期大統領選でメドベージェフ氏を続投させるか、別の人物を立てるかはプーチン氏が決めるだろう」と言うように、今後もプーチン氏が大統領との「双頭体制」という形を取りながら国政のかじを握り続けるのは間違いない。

 世界的な経済危機で「最近の9年間で最も困難な年」(クドリン副首相兼財務相)と予想される今年のロシア経済。通貨ルーブルの下落が生むインフレ、製造業の不振で生まれる大量の解雇者など、社会不安の種は尽きない。極東では先月、政府への抗議デモが起きた。経済成長を追い風に国民の支持を得てきたプーチン氏にとってこうした社会不安を抑え、危機をどう乗り切るかが今年最大の試練になる。対応を誤れば各地で不満が爆発し、ロシア情勢は一気に流動化しかねない。

 もう一つの重要課題はオバマ米新政権との関係構築だ。東欧へのミサイル防衛(MD)システム配備、北大西洋条約機構(NATO)拡大、グルジア紛争などで冷却化した対米関係を修復するのか。今年末に失効する戦略兵器削減条約(START)に代わる核軍縮の枠組みをどう築くか。外交にも積極的に関与するプーチン氏の言動がこれまで以上に注目される年になる。

 「困難な条件下での仕事は血中のアドレナリンを上げる」。プーチン首相は12月29日の閣議で発破をかけた。大統領をしのぐ迫力と存在感は今年も変わりそうにない。【モスクワ大木俊治】=つづく

毎日新聞 2009年1月6日 東京朝刊

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