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2009年1月8日

◎健康創造クラスター 「薬草」は産業化の有望株

 石川、富山県が共同で取り組む「ほくりく健康創造クラスター」事業で、薬草を生かし た温熱療法などの研究が始まる。薬草は金大、富大などに豊富な研究の蓄積があり、ビジネス化の有望株といえる。効果のはっきりしない民間療法などもみられるが、医学的なデータに裏付けられた薬草療法を、たとえば石川、富山県内の温泉施設などで提供できれば、この地域ならではの「湯治」の提案も可能だろう。

 両県によるクラスター事業は昨年動き出したばかりだが、五年間で研究費約三十七億円 が交付される大きなプロジェクトを軌道に乗せるには、地域に還元できる分かりやすいビジネスモデルを打ち出すことが大事である。健康や東洋医学への関心が高まる中、薬草療法はその一つになりえるのではないか。

 健康創造クラスターは昨年夏、文部科学省の「知的クラスター創成事業(第U期)」に 採択された。国際競争力のあるライフサイエンス研究拠点をめざし、最先端の診断機器や診断システム、バイオ機器などを開発するほか、幅広い健康関連産業の創出を図る。将来性が高く、すそ野の広い市場であり、両県が大学、企業、研究機関の集積を生かし、産学官一丸となって取り組む価値は十分にある。

 薬草を使った温熱療法などは同事業の地域プログラムの一環として「未病予防システム 研究会」で具体化させる。金大、富大、医療機関、企業の担当者ら約三十人で構成し、健康と観光を組み合わせた「ヘルスツーリズム」の可能性も探る。

 富大和漢医薬学総合研究所では薬草サウナなど温熱療法システム開発をテーマとし、研 究基盤はすでに整っている。石川県でも地域資源活性化ファンドで医商工連携を促し、温泉旅館が医療機関と協力して点滴、血液検査などのサービスを受けられる事業が採択されている。ヘルスツーリズムはこれから発展が見込める分野である。

 両県が「健康」に関する先進地として幅広く認知されるには、高度な機器の開発にとど まらず、薬草療法のように一般の人々の関心を引きやすい得意分野を積極的に発信していく必要があろう。

◎緑の内需構想 環境と景気の一石二鳥

 オバマ次期米大統領が提唱する「グリーン・ニューディール」は、地球温暖化対策を景 気対策に結びつける一石二鳥のアイデアだ。その日本版というべき「緑の内需」構想の具体化に向け、政府・与党と民主党がそれぞれの案を検討中だが、どちらもオバマ構想をヒントにしたものであり、大きな違いがあるとは思えない。小異を捨て大同につく対応を双方に求めたい。

 地球温暖化対策は、経費ばかりかかって利益にならないと思われがちだが、省エネや新 エネルギーは日本の得意分野であり、電気自動車やハイブリッドカー、太陽光発電、リチウムイオン電池、原子力発電技術などは世界の最先端を走っている。低炭素社会への切り替えを国策として進めると同時に、外需の不振で苦境に立つ製造業を支援し、雇用創出と内需拡大を目指す取り組みは理にかなっている。

 オバマ次期大統領は、新エネルギー開発に十年間で千五百億ドル(約十四兆円)を投資 し、五百万人の雇用創出を目標に掲げている。環境省が策定する日本版は、今後五年間で環境ビジネスの市場を現在の七十兆円から百兆円以上に拡大し、八十万人以上の新規雇用を目指す。

 オバマ構想は、米国よりむしろ日本の産業構造に適した政策だ。たとえば太陽光発電は 、日本の家電メーカーが得意とする薄型テレビの製造技術が応用できる。自動車製造と電子機器、新素材の融合技術である電気自動車、ハイブリッドカーなども同様である。日本が強みを持つ技術力を地球温暖化対策に集中させれば、内需の大きな市場ができるだろう。世界が今、一番必要としている環境技術を日本がリードし、産業の大きな柱にしていく戦略が求められる。

 日本版グリーン・ニューディールは、昨年秋以来、民主党が緑の内需構想として提言し てきた内容とほぼ同じである。他の野党も地球温暖化対策の推進を提唱しており、たとえ政権交代になったとしても政策は継続されるだろう。米国に負けない強力な取り組みが必要だ。


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