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医療界の再編を―08年回顧と09年の展望(6) 全国医師連盟・黒川衛代表

■医療崩壊から再生へ向け始動


―2008年は全医連の創立元年ということもあって、お忙しかったと思いますが、活動を振り返っていかがですか。
 「患者さんと医療従事者の権利を守る」「医師の目から見た社会正義を実現する」の2つの理念を掲げ、勤務医、開業医、研究医が幅広く集まる新しい組織をつくろうと、約2年の準備期間を経て、08年6月に発足しました。年末までに会員数も820人を超え、本格的な活動に向けての足場固めができたと思っています。
 準備段階から特定の政党に縛られない独立した任意団体を目指し、▽診療環境の改善▽医療情報の発信▽法的・倫理的課題の解決―を3大プロジェクトと位置付けて活動してきました。
 具体的には、7月に全国会議員を対象に「医療費と医師数に関するアンケート」を実施。また、医療事故の真相究明・再発防止のため、9月には「第三次試案」への対案を出した。現場の医師だけでなく、患者さんからも評価していただきました。
 刑事裁判だけでなく、過労死自殺裁判で上告した中原のり子さんの民事裁判など、過重労働に関する裁判の支援も続けていくつもりです。

―08年の医療業界を振り返ってみて、印象に残っていることは。
 救急患者の受け入れ不能や自治体病院の閉鎖など、医療崩壊に関するニュースが報道され、医療現場の問題が明らかになり、「日本の医療体制はいつでも国民の健康を守ってくれる」という幻想が完全に崩れた年だったと思います。
 医療を法的な側面で支えるシステムである医療安全調査委員会についての議論が迷走した年でもありました。救急学会や麻酔科学会など多くの団体が厚生労働省案に反対。日本医師会のリーダーシップの弱さも露呈し、疑問を唱える地方医師会が続出しました。今、現場の医師は過労の不安、訴訟の不安、経営に対する不安の3つの不安を抱えています。特に訴訟不安は「委縮医療」につながり、患者さんにも危険を及ぼす可能性もあるので、医療安全調査委員会の問題は非常に大きいととらえています。
 明るい題材としては、医療費抑制策を見直そうという機運が高まってきたこと。先程お話したように、全国会議員を対象にアンケート調査を行ったところ、多くの議員が、日本の医療が限界に来ていることを認識してくれていた。方向転換できる可能性は十分あると思います。

―09年は医療業界にとってどんな年になると予想されていますか。
 まず、医療界の再編が起きると思います。これまでの厚労省に依存した日医のやり方に異を唱える医師や団体も増えてきました。総選挙の結果次第では、厚労省改革の元年になるかもしれません。全医連としては、「医師と医療の真の社会貢献」を目指す立場から、医療界の再編に寄与していきたい。
 また、09年は総務省から公的病院改革のガイドラインが出るため、自治体病院の問題点がさらに明らかになると予想しています。自治体病院は、消防署などと同じ社会インフラであり、独立採算で黒字にしろというのはそもそも無理な話です。社会インフラだからこそ、民間病院がやりたがらないような診療も引き受けて、地域に貢献してきた。民間病院と比べて給与が安く、なかなか休みが取れなくても、医師は自治体病院で働くことを誇りに思っていた。しかし、各自治体で医師軽視の施策が出るならば、現場で働く医師たちから見放されてしまいます。自治体病院はガイドラインを無理やり押し付けられ、助成金は減らされ、医師たちからは見放され、あらためてそのあり方が問われる年になるでしょう。

■より信頼される組織を目指して

―全医連の09年の活動予定や目標などについて教えてください。
 08年は基盤づくりに重点を置いて、会員を増やすための活動はしてきませんでしたが、09年は積極的に呼び掛けていきたい。現在、会員数は820人ですが、6月の第2回総会までに1000人を目指し、数年以内に1万人突破を実現したい。
 また、4月をめどに独立した組織となる「ドクターズユニオン」(仮称)を立ち上げる予定です。日本で初めての、職能別の医師の全国的労働組合です。特定の政党に縛られたり、偏ったりすることのない独立した組合として、時間外労働問題の改善などに取り組みます。
 沖縄では、県が新人医師を確保する予算を捻出(ねんしゅつ)するために、中堅医師の医師手当を削減しようとしました。ところが、沖縄県医師労組はこれを阻止すべく活動を続けている。わたしたちも「沖縄に学べ」を合言葉に、実行力・実効力のある組織をつくりたいと考えています。

―そのほかにはどんな活動を予定していますか。
 医師に対する国民の信頼を高めるためにも、医師が自律的に職業倫理を確立するための協議機関の設置を呼び掛けていきたい。現在は医師会や各臨床学会、諸団体がそれぞれ独自に「医師の倫理」をうたっていますが、全医師が平等に参加・発言できる協議機関の設置により、「医師職の自律的倫理規定」を実現することが可能になります。
 そのほかに、▽社会的視野に立った臨床のケーススタディーをするための「第1回東京臨床研究会」開催▽設立2年目の総会開催▽公立病院の時間外労働に関する調査―などを予定しています。時間外労働に関する調査では、08年末までに全国の公立病院への調査票の発送を済ませ、三六協定の締結状況とその実情を把握し、解析するつもりです。
 全医連はまだ若い組織なので、不十分な点が多い。今後も多くの医師の知恵と力を借りて、「医師と医療の真の社会貢献」を目指し、努力を重ねていきたいと思っています。

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更新:2009/01/06 13:25   キャリアブレイン

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