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【主張】緑ニューディール 日本の英知を示す内容に
日本でも「グリーン・ニューディール」に向けての動きが始まった。
経済不況からの脱却と地球温暖化対策を両立させようという新たな政策構想である。
麻生太郎首相が斉藤鉄夫環境相からの提言に対し、各省庁と連携を取りつつ計画策定を急ぐよう指示をした。
グリーン・ニューディールという言葉は、オバマ次期米大統領のビジョンから生まれたものだ。米国が柱に据えようとしている大型の内需刺激策であり、世界が参考にしようとしている。
ニューディールは、約80年前の世界大恐慌からの脱却を目指して当時の米大統領が打ち出した政策だ。今回、それに環境を意味するグリーンが冠せられた。
従来は、経済産業活動の活発化と、地球温暖化防止に代表される環境対策は、相いれないものとして考えられがちだった。それが世界不況を契機として手を結んだ。思いがけない状況の出現だ。
グリーン・ニューディールは、21世紀の国際社会が直面している地球規模の2大課題を解決し得る可能性を秘めている。日本版グリーン・ニューディール構想の策定に注目したい。
麻生首相に示された素案には、諸対策が盛られている。省エネ家電の普及や電気自動車などの開発がある。太陽光発電や風力発電への集中投資の促進策も挙げられている。それで新たに80万人以上の雇用の創出を目指す計画だ。
しかし、それだけで十分だろうか。新構想では「低炭素社会」の構築に向けて、社会全体が動きだすべき時期が到来しているということを、国民に明確に伝える必要があると思われる。
いずれ、石油などの化石燃料の上に繁栄した現代の炭素社会から軸足を移さなければならない時代がやってくる。その遠くない将来に向けて、都市の構造そのものから、公共交通手段までを含めた抜本的な改革への準備のために、日本のグリーン・ニューディールを活用すべきである。
太陽光や風力発電の施設を増やせばよいという話ではない。景気の浮揚を図りながら、新たな取り組みが地球環境の改善にどのように関係しているかが分かるグランドデザインが欠かせない。
新経済・環境構想では、各国が英知を競うはずである。ばらまき型のグリーン公共事業に矮小(わいしょう)化させない高い見識を望みたい。