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社説:公選法見直し ネット選挙の解禁を急げ

 政権選択を問う衆院選が今年は必ず行われる。有権者が政策を比較するマニフェスト(政権公約)の明確化に各党が努めるべきことはもちろんだが、その舞台を整えることも大切だ。与野党はインターネットを使った選挙運動の解禁など、公職選挙法の規制緩和を早急に実現すべきである。

 オバマ次期大統領を誕生させた米大統領選は、選挙で国民が政権を選択する躍動感を印象づけた。ひるがえって次期衆院選を展望すると、有権者の関心を十分吸収するに足る選挙運動が展開されるか、残念ながら心もとない。「べからず集」と呼ばれるほど規制に主眼を置いた現行の公選法が、政策論争の足かせとなりかねないためである。

 その代表がネット選挙規制だ。公選法の解釈上、ホームページですら法定外の「文書図画」とされ、公示後の更新は制限される。総務省の研究会がホームページに限定し解禁するよう提言し、6年が過ぎた。にもかかわらず選挙に不利に働きかねないとの慎重論が自民ベテラン議員などに根強く、放置されている。

 米大統領選ではネットを通じた小口献金が威力をみせつけた。有権者が政党、政治家の主張にふれるうえで今やネットは不可欠だ。ルールが不備なまま事実上の野放し状態になることを防ぐ意味からも、法整備が必要だ。

 公選法の規制が選挙の公正維持に寄与した半面、選挙カーからの名前の連呼に象徴される選挙風景を助長したことは否定できまい。そもそも立候補届け出日から投票前日まで「選挙運動期間」を設け、戸別訪問などを厳しく制限している国はほとんどない。

 マニフェストを記した文書の配布も、より規制を緩めるべきだ。現行法で政党のマニフェストは選挙運動の文書として選挙期間中の頒布が認められるが、公示前は内容次第で事前運動とみなされ制限される。学者や財界人らで組織する「新しい日本をつくる国民会議(21世紀臨調)」はマニフェストを「政治活動」と位置づけ、公示前から自由に公表、頒布できるよう提言している。検討に値する課題だろう。

 公選法改正と言えば、自民党には最近、一定の得票に届かぬ候補からの供託金没収の緩和を図る動きが浮上している。共産党に衆院小選挙区で候補を立てやすくさせ、野党票を分散させる思惑とみられている。供託金の見直し自体は検討に値するが、内向きな発想の「規制緩和」では唐突感は否めない。

 「にぎやかな総裁選」と銘打ったさきの自民党総裁選で候補はホームページで動画なども駆使した宣伝合戦を繰り広げた。効果を認めているのなら、国民参加の選挙でこそ、過剰な規制を速やかに緩めるべきだ。「にぎやかな衆院選」こそ実現してほしい。

毎日新聞 2009年1月8日 東京朝刊

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