現在位置:
  1. asahi.com
  2. ニュース
  3. ビジネス
  4. 経済気象台

先行回復の前提

2009年1月8日

印刷

ソーシャルブックマーク このエントリをはてなブックマークに追加 このエントリをYahoo!ブックマークに登録 このエントリをdel.icio.usに登録 このエントリをlivedoorクリップに登録 このエントリをBuzzurlに登録

 新年を迎え、考える時間もあったことでこの不況に対する認識も深まりつつある。日本の場合、円の急上昇や海外での売り上げ急減という想像もしなかった緊急事態に対し、「派遣切り」もいち早く広がった。不況報道もそれで前倒しに熱した観がある。米国では、雇用の減少は金融業では顕著だが、自動車産業などは組合のガードもある。他産業の失業者増加も今後が正念場となろう。

 オバマ政権による財政出動や株価の動きから、米国経済は短期に回復するという見方もあるが、財政出動の効果は一時的な緩和剤であって根本的な対策ではない。その失望感が1929年〜33年の経験のように、二番底につながるのではないか。つれて日本も二番底となる可能性はどうか。経営の縮小策が欧米よりも先行したことで、日本には二番底がないか、もしくは軽い二番底で、他よりは一足先に回復が先行する可能性がある。

 しかし、それには前提がある。その一つは経営者と社員との信頼関係の回復だろう。「派遣切り」を急ぐ前にもっと経営者としてやるべきことや手順があったのではないかという批判は、経営者への社会的信頼の低下や、働く人々全体の意欲の減退につながっている。人件費を変動費ととらえ、労使間の絆(きずな)よりもコスト軽減を優先する姿勢が続くなら、今後は正社員のモラルにも響く。

 一方で今後の国際競争力を考えると、新しい事態に適応する柔軟さや開拓意欲は、現場の一人ひとりの感性や発意にかかってゆく。その基礎は「働きがい」であり、労使の相互信頼だろう。派遣だけではなく、社員へのかかわり方をこの試練を機にどう再構築してゆくかは大きな課題である。(瞬)

PR情報
検索フォーム
キーワード:


朝日新聞購読のご案内

株価検索