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競技かるた 脳を酷使する「格闘技」

2008年12月31日

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写真勝負は0コンマ何秒という競技かるた=静岡県富士市の県立富士高校

 歌が読み始められたと思ったら、もう札(ふだ)が宙を飛んでいる。

 かるたといえば家族や親類での和気あいあいの正月遊びの定番だが、「競技」の方はそんな優雅で楽しげな雰囲気からはほど遠い。

 張りつめた空気。スタート前の短距離走者のように前傾姿勢で札をにらむ2人。「パーン」という畳をたたく音とともに一瞬の勝負がつく。速すぎて、隣で見ていてもどちらが札を取ったのかまったく分からない。

 「記憶力や瞬発力だけでなく、集中力を保つ体力も必要。まさに総合頭脳スポーツ、いや格闘技です」と静岡県立富士高校百人一首部の顧問、外山和之さん(45)。同部は、30年の歴史がある「かるたの甲子園」、全国高校小倉百人一首かるた選手権大会で過去12回優勝の強豪だ。冬休み中も続く練習をのぞかせてもらった。

 ルールは簡単だ。小倉百人一首の札を、自陣と敵陣に25枚ずつ並べる。暗記のため与えられる時間は15分。書かれているのは、「五七五七七」のうち下の句のみ。上の句が朗唱されたら札を取る。敵陣の札を取ったら自陣から1枚、敵陣に置ける。先に札がなくなれば勝ちだ。詠まれても畳の上にはない「空(から)札」が50枚あることが、難しさと勝負の妙味を増す。

 百首をすべて覚えるのはもちろん大前提。最初の一文字を聞くだけで取れる札が7枚。逆に「あ」から始まる歌は16枚もある。これらが空札や自陣にあるかどうかで「作戦」の立て方も変わる。いやが応でも脳トレになるはずだ。同部の1年生、佐野百合沙さん(16)は「古文の理解にも大きく役立ってます」。札の取り合いでけがをしたという右手の包帯が、勲章のようだ。(石川智也)

●愛好者は100万人

 百人一首を使ったかるた遊びは江戸時代から庶民の間にあったが、ジャーナリストの黒岩涙香が明治末期にルールを確立、競技として全国に広がった。全日本かるた協会によると、現在の競技人口は小学生から高齢者まで約5万人。愛好者は100万人という。

 新春恒例の「名人戦・クイーン戦」をはじめ、実力に応じた五つの階級ごとに、約60の全国大会が毎年開かれている。同協会は「頭の訓練になり、心身の健康や老化防止にも影響があるはず。各地にかるた会があるので、ぜひ気軽に門をたたいてほしい」

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