米国に端を発した金融危機について、米連邦準備制度理事会(FRB)のグリーンスパン前議長は「百年に一度の信用収縮の津波」と議会で証言した。
前議長は今回の世界同時不況が、一九二九年の大恐慌を上回るという厳しい見方をしているのだろう。景気悪化の直撃を受けている国は、当時に比べ格段に多くなっている。
しかし、大恐慌の時代と違うのは、国際協調によって危機を克服する枠組みが存在することだ。先進国や新興国を含めた首脳会議開催や経済関係の国際機関でも危機脱却に向け協議ができる。
政府の景気刺激策の重要性も増してきている。大恐慌では、フランクリン・ルーズベルト大統領が、ニューディール政策を推進して米国を不況のどん底から浮上させるのに成功した。
有名なTVA(テネシー川流域開発公社)では、多数のダムを建設し水力発電による安い電力を住民の生活向上や肥料生産にあて、地域振興に結びつけた。単なる公共投資の拡大ではなかった。
ニューディールはトランプの配り直しの意味だ。米国の歴史家モリソンは「一般の人間に不利な切り方はもうやらないこと」と、福祉の側面を強調している。日本の景気対策が国会で議論されているが、非正規雇用者ら社会的弱者への優しい視点を忘れてはなるまい。