中村七之助が「新春浅草歌舞伎」(東京・浅草公会堂)の2部で「娘道成寺」を踊っている。父の勘三郎、母方の祖父の中村芝翫(しかん)、父方の曽祖父の六代目尾上菊五郎と、代々が得意としてきた人気曲への初挑戦だ。【小玉祥子】
七之助は「曲も振りもいいし、女形の代表的な踊りです。うれしいですが、プレッシャーも不安もあります」
所化(僧)では何度も出演した。「やりたいと思い、ずっと見ていたので振りも覚えています。父には『丁寧に教えるよ』と言われました」
浅草歌舞伎への初出演は01年の正月で、17歳だった。その時に演じたのが「一條大蔵譚(いちじょうおおくらものがたり)」のお京。市川亀治郎の常盤御前であった。今回はその「大蔵譚」の常盤を1部で演じている。大蔵卿は亀治郎。
「品、風格の必要な役で、動きもあまりない。高貴な中に凜(りん)としたものが出れば。安っぽくならないようにしたい」
立ち役が多かったが、近年は女形を演じる機会が増えている。「以前は舞台で苦しい形を取らなければならない女形が嫌だったのですが、今は魅力が分かってきました」
浅草では「忠臣蔵六段目」のお軽、「義経千本桜」の典侍の局など、大役を初演してきた。「いろいろな役をやらせていただいて楽しかった。昔は若さだけでぶつかっていけましたが、もう浅草で9年目です。1年間、自分が何をしていたかをお見せする試験の場でもありますから、大切につとめたい」
1部では「土蜘(つちぐも)」の胡蝶(こちょう)も踊っている。土蜘の精は兄の中村勘太郎だ。
公演は27日まで。問い合わせは03・5565・6000へ。
毎日新聞 2009年1月7日 東京夕刊