映画のスクリーンやコミックから抜け出したようなキャラクターに扮(ふん)した“コスプレーヤー”。今や海外からも注目される日本の「カルチャー」の一つだ。鳥取県湯梨浜町引地にある中国庭園、燕趙園では、全国各地からコスプレーヤーが集まる「中華コスプレ大会」が開かれている。
東郷池のほとりにある庭園は、中国の歴史絵巻にトリップしたような景色が広がる。中国風コスプレの背景にはもってこい。回を重ねるごとに参加者は増え、中国を舞台にしたゲームやアニメ好きのコスプレーヤー100人ほどが集まるまでになった。
06年9月の第1回からこれまでに5回開催。少ない同県内参加者のなかで唯一の皆勤賞が米子市の会社員、林原武司さん(42)を中心に結成する「だんな一座」。西遊記をテーマにしたコスプレで出場し、会場を沸かせてきた。
■2歳の孫悟空
一座の看板女優は林原さんの長女夢(まどか)ちゃん(2)。生後9カ月にして初舞台を踏んだ。夢ちゃんの演じる孫悟空は今では大会になくてはならない存在だ。ほかのコスプレーヤーから写真撮影をねだられることもある。
お父さんが自前のミシンを駆使して作った衣装は工夫を凝らしている。三蔵法師が孫悟空の頭にはめた輪は、いたずらすると頭を締めつけるが、夢ちゃんの輪は成長しても大丈夫なようにゴムでできている。ズボンも大きめ。あと2、3回はこのままいけそうだ。
■父親の手作り
林原さんは、学生時代の仲間から誘われ、演劇やミュージカルに参加してきた。米子や松江で開かれる漫画などの同人誌の即売会にも顔を出し、コスプレの下地はあったという。燕趙園で大会が開催されるのを知り、大好きな西遊記で夢ちゃんと参加しようと決めた。
衣装作りは、仕事やミュージカルの練習の合間を縫って、手芸用品店に足を運び、生地選びから自分でした。「器用なわけではないから基本は直線縫いです」と笑うが、孫悟空のしっぽなど細部にまでこだわる。脚本も自ら手がけ、毎回、西遊記の違う場面を劇に仕立ててきた。
昨年10月の第5回大会は、初めてのアジア大会で韓国や中国からもコスプレーヤーを招待した。町は送迎用のマイクロバスを出し、地元の婦人会メンバーが滞在中の食事作りのボランティアを買って出た。官民挙げての取り組みに、コスプレ姿で大会のコンテスト審査員を務めた平井伸治知事も「次は世界を目指してがんばらないと」と期待を込めた。
■県外参加9割
大会の知名度は上がってきたが、参加者の9割が県外者。山陰地域からの参加者は少なく、林原さんも残念がる。「鳥取のイベントというより、たまたま場所が鳥取なだけになっている。ほかのイベントや民間企業ともタイアップして地元が盛り上がらないと」
だんな一座はもちろん次回も参加する。昨年12月に長男玄(はるか)くんが生まれた。「三蔵法師」役でデビューする予定だ。【武内彩】
2009年1月7日