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街の遺産生かし 魅力発信──水辺舞台に「水都大阪2009」2009/01/06配信
「東京では川はどんどんなくなってしまったが、大阪には多くの水の財産が残っている。これは大阪にとって価値を高める大きなチャンス」。「水都大阪2009」のプロデューサーを務めるアートディレクターの北川フラムは話す。「地球環境保護の点から言って、世界的にも海や川に視線が集まっている。フランス・ナントのように河川を生かして都市整備を進める例もある」という。 大阪市の中心部には堂島川や土佐堀川、道頓堀川、東横堀川などが流れ、世界的にも珍しい「ロ」の字型の水の回廊を作る。8月22日から10月12日にかけて開かれる「水都大阪」はこの水路と周辺を会場にアートやパフォーマンス、橋のライトアップなどを開催、街のにぎわいをつくり出す。 府と市、関西経済連合会など経済界が主催し、9億円をかけて実施する。2002年ごろから計画が進められ、今年はそのシンボルイヤーと位置づけられている。 先月中旬、「水都大阪」に先駆け、土佐堀川に架かる錦橋で点灯式が実施された。8月21日からは北浜にある石造りの難波橋や、天神橋もライトアップされる予定だ。 このほか、中之島を拠点に、美術家のヤノベケンジが装飾する船が水の回廊を巡る「アート舟プロジェクト」や、大阪証券取引所など周辺の近代建築にアート作品を設置する催しなど、徹底的に「水」を意識した企画が進行中だ。現在、アーティストの選定などを進めており、3月までに内容が固まるという。 「一過性の万国博覧会の形式ではなく、今ある遺産を使って大阪の将来像を考えたい」と実行委員会事務局次長の乾俊人は語る。会期後も美術家らが水辺を有効活用できるような仕組みを作る考えだ。北川も「来年以降も、中之島がアーティストが集まる場所として定着するようにしたい」と話す。 また、「水都大阪」の総合アドバイザーを務める建築家・安藤忠雄の展覧会が、大阪港のサントリーミュージアム[天保山]で5月23日から7月12日まで開かれる。「都市再生や環境の点から大阪の街づくりを考え続けた安藤さんの軌跡を紹介したい」と同ミュージアム学芸主任の岡田彰。中之島での桜の植樹など、安藤がこれまでに思い描いた大阪の都市構想を模型で紹介するほか、アブダビ海洋博物館や兵庫県立美術館など、水にちなむ国内外の安藤建築をパネルや映像で見せる。 「水都大阪」の事務局は同ミュージアムをはじめ、中之島地区にある国立国際美術館、市立東洋陶磁美術館などとも連携したイベントを模索中。「水都大阪」は当初、大阪府知事の橋下徹が反対した経緯もあり、計画には一部遅れも生じているという。 だが、開催するからには当初の狙いが実を結び、将来に財産を継承できるような祭典を期待したい。雇用不安や金融危機で経済状況が急速に悪化するときこそ、府民の心を明るくする文化の力が試される。=敬称略 (大阪・文化担当 関優子)
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