街の遺産生かし 魅力発信──水辺舞台に「水都大阪2009」

 
              
HOME / ひたる アート / 記事
 
ひたる アート美術・音楽・演劇の最新情報を
 

街の遺産生かし 魅力発信──水辺舞台に「水都大阪2009」

2009/01/06配信

「水都大阪2009」の開催に先立ち、土佐堀川に架かる錦橋がライトアップされた(2008年12月、大阪市内)
「水都大阪2009」の開催に先立ち、土佐堀川に架かる錦橋がライトアップされた(2008年12月、大阪市内)

水の都・大阪をアピールしようと、大阪府・市や経済界などによる大掛かりな文化企画が今年、相次いで開かれる。中核となるイベント「水都大阪2009」は大阪市の中心部の水辺を舞台に、アートや光で大阪の街並みを彩り、都市の魅力を再発見する試みだ。

 「東京では川はどんどんなくなってしまったが、大阪には多くの水の財産が残っている。これは大阪にとって価値を高める大きなチャンス」。「水都大阪2009」のプロデューサーを務めるアートディレクターの北川フラムは話す。「地球環境保護の点から言って、世界的にも海や川に視線が集まっている。フランス・ナントのように河川を生かして都市整備を進める例もある」という。

 大阪市の中心部には堂島川や土佐堀川、道頓堀川、東横堀川などが流れ、世界的にも珍しい「ロ」の字型の水の回廊を作る。8月22日から10月12日にかけて開かれる「水都大阪」はこの水路と周辺を会場にアートやパフォーマンス、橋のライトアップなどを開催、街のにぎわいをつくり出す。

 府と市、関西経済連合会など経済界が主催し、9億円をかけて実施する。2002年ごろから計画が進められ、今年はそのシンボルイヤーと位置づけられている。

 先月中旬、「水都大阪」に先駆け、土佐堀川に架かる錦橋で点灯式が実施された。8月21日からは北浜にある石造りの難波橋や、天神橋もライトアップされる予定だ。


 会場の1つとなる中之島のコンセプトは「夢と灯(あか)りのプレイランド」。「水辺を楽しむ100の方法」と銘打って、参加型のワークショップやパフォーマンス、ダンスなど合計で100のイベントが開かれる。例えば、地面にランタンを並べて、“光の絵”を描くことで知られる美術家の藤浩志が参加、夜の中之島を幻想的に演出する。美術家で京都造形芸大教授の椿昇が、同大の学生らとねぶたを作る計画もある。

 このほか、中之島を拠点に、美術家のヤノベケンジが装飾する船が水の回廊を巡る「アート舟プロジェクト」や、大阪証券取引所など周辺の近代建築にアート作品を設置する催しなど、徹底的に「水」を意識した企画が進行中だ。現在、アーティストの選定などを進めており、3月までに内容が固まるという。

 「一過性の万国博覧会の形式ではなく、今ある遺産を使って大阪の将来像を考えたい」と実行委員会事務局次長の乾俊人は語る。会期後も美術家らが水辺を有効活用できるような仕組みを作る考えだ。北川も「来年以降も、中之島がアーティストが集まる場所として定着するようにしたい」と話す。

 また、「水都大阪」の総合アドバイザーを務める建築家・安藤忠雄の展覧会が、大阪港のサントリーミュージアム[天保山]で5月23日から7月12日まで開かれる。「都市再生や環境の点から大阪の街づくりを考え続けた安藤さんの軌跡を紹介したい」と同ミュージアム学芸主任の岡田彰。中之島での桜の植樹など、安藤がこれまでに思い描いた大阪の都市構想を模型で紹介するほか、アブダビ海洋博物館や兵庫県立美術館など、水にちなむ国内外の安藤建築をパネルや映像で見せる。

 「水都大阪」の事務局は同ミュージアムをはじめ、中之島地区にある国立国際美術館、市立東洋陶磁美術館などとも連携したイベントを模索中。「水都大阪」は当初、大阪府知事の橋下徹が反対した経緯もあり、計画には一部遅れも生じているという。

 だが、開催するからには当初の狙いが実を結び、将来に財産を継承できるような祭典を期待したい。雇用不安や金融危機で経済状況が急速に悪化するときこそ、府民の心を明るくする文化の力が試される。=敬称略
(大阪・文化担当 関優子)
Index
Today's Topics 関西ラウンドアップ:前週の関西の動きを振り返り解説
ニュース 聞く リサーチ:関西人気質などをネット調査交え分析
深める ローカル:経済・学術・文化の底流を探る ひたる アート:美術・音楽・演劇の最新情報を
交わる ピープル:地域へのこだわりを持つ人を紹介 知る カルチャー:創作現場などを訪れ歴史を学ぶ
楽しむ スポーツ・レジャー:地域の知られざるトピックを発掘 役立つ ライフ:便利な商品や施設情報を満載
 
ページの一番上へ
サイトポリシー 免責事項 個人情報 著作権 リンクポリシー