水野 文也記者
[東京 6日 ロイター] 百貨店業界の苦戦が続いている。大手各社(三越伊勢丹ホールディングス<3099.T>、J.フロント リテイリング<3086.T>、高島屋<8233.T>)の昨年12月月次売上は大きく落ち込み、厳しい景気情勢を反映した格好となった。
景気低迷の長期化が懸念される中、消費者の生活防衛に対応した販売戦略にとどまらず、高コスト体質を改善するリストラが来期以降の収益を展望する上で浮上のカギになるとの見方も出ている。
市場関係者の間から「景気の悪化局面が長引けば、さらに百貨店業界は厳しくなる。生活防衛が意識される中で『高額品=負け組、安物=勝ち組』と消費関連株の二極化が進んでおり、前者の百貨店株の株価下落リスクは小さくない」(準大手証券情報担当者)との声が聞かれるように、マーケットの百貨店株を見る目は冷たい。
実際、12月の月次動向を受けた6日の株式市場で各社の株価は、相場全体が底堅くなったのにもかかわらず、いいところなく推移。昨年12月26日に高島屋が2009年2月期の業績見通しに関して大幅下方修正を発表したことで、業界全体について足元の悪い状況が織り込まれたとの見方があったものの、この日の動きからはさらなる悪化を市場が懸念しているとみることができそうだ。
各社の12月月次動向は、三越が前年同月比9.9%減、伊勢丹が同10.0%減、大丸が同9.0%減、松坂屋が同16.1%減、高島屋が同10.4%減と2ケタのマイナスが目立つ。ご祝儀ムードも漂う1月2日の初売りも「入店客は前年並みでにぎわったが、売上高は落ち込んだ」(三越伊勢丹ホールディングス広報担当者)という。各社とも来客数そのものは落ち込んでおらず、客単価の低下が消費者の生活防衛に対する意識の高まりを示している。
初売りで松坂屋は用意した福袋を売り切ったものの、完売までの時間が例年よりも長くかかり、1万円、3万円、5万円と3種類あるうち1万円に人気が集まるなど、「縁起物」に対しても節約志向が感じられたという。
今後も厳しい景況感が続くというのが業界の共通した見方。高島屋の水野英史常務は昨年12月の下方修正発表時に行った会見で、今回の消費不振について第1次・第2次オイルショック時よりも厳しい状況との認識を示し「2009年度(2010年2月期)も厳しい状況が継続すると考えている。それに基づいた経営計画、予算編成を検討していく」と語っていた。
もちろん、各社ともまったく手をこまねいているわけではない。「PB(プライベート・ブランド)商品の企画、価格の見直しなど消費マーケットの変化に対応していく」(Jフロント広報担当者)など、生活防衛に走る消費者のニーズに合った商品の品ぞろえに取り組んでいる。ファーストリテイリング<9983.T>が5日発表した12月の国内ユニクロ事業の既存店売上高は、前年比10.3%増と11月(32.2%増)に続き2ケタの伸びを記録するなど、消費マーケットにうまく対応しているケースもあるためだ。
もっともこうした対応だけでは、2010年2月期を考える上で、収益向上が期待できないとの指摘も出ている。
ある証券会社の消費担当アナリストは「商品構成の変化などの施策は当然のことで、利益を本格的に回復させるためには高コスト体質を変える必要がある。統合した各社についても、その効果は十分とは言いがたい」と話す。
野村証券・アナリストの正田雅史氏は「百貨店各社はリストラする余地は広い。都心に土地を保有するなど豊富な資産があり、これを活用して経営改善を進めるべきだ」とした上で「今期は下半期の落ち込みが大きいため、一段の構造改革に踏み込めた企業は、消費環境が厳しい中でも来期下半期には浮上の余地が生じてきそうだ」と語っていた。
(ロイター日本語ニュース 編集 田巻 一彦)