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民法改正案:時効延長 被害者、見直しに期待 救済へ「撤廃」の声も

 明治から100年以上維持されてきた民法の「除斥期間」が変わる方向になった。20年で損害賠償請求権が消滅するとの規定は、国や企業の不法行為による被害者の救済を阻む「時の壁」となってきた。薬害やハンセン病などの訴訟で、この壁と向かい合ってきた弁護士らは「ぜひ被害者の視点に立った見直しの実現を」と訴えている。

 「正当な訴えを起こしても、国は必ず除斥期間を盾にする。裁判所は『極めて例外的なケース』以外は門前払いにしてしまう」。ハンセン病国賠訴訟西日本弁護団の徳田靖之代表は除斥期間の存在を問題視する。

 01年、元患者側が熊本地裁で全面勝訴し、国が控訴を断念した同訴訟でも大きな争点になった。元患者が強制隔離などに遭ったのは戦前や戦後まもない時期が多く、国は損害賠償請求権の消滅を強く主張した。判決は「元患者たちの『人生被害』は、らい予防法廃止(96年)まで継続・累積していた」として国側主張を退けた。

 それでも徳田代表は「裁判官は『人生被害』の理屈を生むのに相当苦労した跡がみえ、法務省も『除斥期間の不適用は誤り』と猛反発し、控訴断念に抵抗したと聞く」と明かす。そのうえで「『20年』を実態に応じて中断できる改正が望ましい」と指摘する。

 「延ばすなら50年、60年に」と話すのは、B型肝炎訴訟東京弁護団の柳沢尚武弁護士。予防接種でB型肝炎に感染した乳幼児は、発症まで時間がかかることが多く、除斥期間の起算点が争点となった。06年の最高裁判決は「起算点は発症した時」と認定したが、その後の同種訴訟で国は「未発症の原告は接種時を起算点とすべきだ」と損害賠償請求権の消滅にこだわる主張をしており、原告側と激しく対立している。

 国賠訴訟以外で問題化したケースもある。殺人罪の公訴時効成立後に男が自首し、小学校教諭の石川千佳子さん(当時29歳)が約27年前に殺されていたことが判明した事件。男に対する遺族の損害賠償請求訴訟では、1審東京地裁が殺害から20年の経過を理由に請求を認めなかった(控訴審で逆転勝訴)。

 遺族側代理人の川人博弁護士は「DNA技術やパソコンの普及で証拠が長期間保存できるようになった。除斥期間をなくすのも一案だろう」と話している。【銭場裕司、伊藤一郎、坂本高志】

毎日新聞 2009年1月7日 東京朝刊

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