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民法改正案:「生命の侵害」時効延長 「30年」一つの案に--法務省検討

 法務省は民法の時効のうち、損害賠償請求権がなくなる「除斥期間」について、生命を奪われたり、重い後遺症が残る危害を加えられた場合は、現行の「20年」から引き上げる方針を固めた。主に殺人や交通死傷事故が想定され、被害者や遺族の心身の不安定な状態が長引き、請求権行使に時間がかかることを考慮した。公害や薬害に適用されれば、被害の救済対象が広がる可能性もあり、除斥期間を理由に国の責任を退けてきた訴訟に影響を与えるとみられる。

 民法724条は損害賠償請求権を行使できる期間について、不法行為(他人の権利を侵害し損害を発生させる行為)から20年と定める。法務省は民法の時効制度全体の見直しを進めており、724条を削除した上で、債権に関する短期の消滅時効以外は、10年程度に統一する方向で検討している。早ければ09年の法制審議会に改正案を諮問する。

 しかし、「生命の侵害」などについては、被害者や遺族の多くは心身のダメージから長期間、日常生活に困難が生じ、提訴が事実上難しい状態に陥っていることがある。相手に深刻な被害を与えた加害者側が、一定期間の除斥期間延長を受け入れるのもやむを得ないと判断した。具体的な引き上げの期間は今後検討するが、「30年」も一つの案という。

 戦時中の強制連行の被害者や元従軍慰安婦らが国を訴えた一連の戦後補償訴訟などでは除斥期間を理由に請求を退けた判決も多かった。しかし、筑豊じん肺訴訟の最高裁判決は04年、除斥期間の起算点を不法行為時でなく発症時・発症進行時ととらえて救済対象を拡大した。除斥期間が引き上げられれば、こうした被害者の救済範囲も広がることになり、法務省は「今後の検討対象となる」としている。【石川淳一】

毎日新聞 2009年1月7日 東京朝刊

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