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諏訪耕平の研究メモ このページをアンテナに追加 RSSフィード

2009-01-06

「今何してるの?」という質問は禁句となっていた

正月に久々に会った友人たちは皆元気そうで安心した。ただやはり我々ももう30歳を迎え,気になることはいくつかあった。まず,一番面白いというかショックというか複雑な現象だなと感じたのは,「今何やってるの?」という質問が禁句になっているということだ。

10人ぐらい集まると,ご時世なのかもしれないが,1人2人はフリーターのような生活を送っているものもいる。そういう人間への配慮だろうか,「今何やってるの?」は禁句であり,仕事の話も極力避けようという空気があった。

さらに,ある友人は彼女を連れてきていたのだが,この2人に対して「結婚」の話題を持ち出すのもタブーである。以前私はある友人に彼女を紹介され,「結婚するの?」と聞いたところ空気がものすごくどよーんとしたことがあった。同席者には後から,「あんなこと聞いちゃ駄目だよ」と怒られた。そうなのか。

思い出話も悪くないが,それだけでずっと持つものではない。皆一所懸命生きているのだし,色々と思うこともあるだろう。また,旧友たちと仕事上の関係を持っておくのも悪くない。しかしそれは我々のグループにおいてはタブーとなってきている。お互いを傷つけあわないようにするためのルールなのだろう。しかし,そういう関係は長続きするのだろうかという気もする。

私も研究者として自立できているわけではないから,旧友たちと会うのはひどく緊張する時期があった。当時会社に入って3〜4年の友人は,私の不安定な立場をなじり,「いいよなあ気楽で」とテンプレートのようなことを言い,「こっちだって大変だよ」と言った私に対して「ふざけるな」と声をあげた。会社員がいかにつらいか,お前らに分かってたまるかということらしい。

それはそれで悲惨な思い出ではあるのだが,私もその経験を乗り越えて強くなった。当時,怒りもしたが,しかし自分の甘さを痛感しもした。自分の言葉に説得力がないから,彼は私を馬鹿にしたのだろうと思った。

そして,今年は今自分がやっていることを皆に伝え,理解してもらおうと思っていた。相手の苦労も聞いてあげたいと思った。しかし,いつの間にか,研究者への道を目指すということは,それほど大変なこととは認識されなくなっていた。今,何よりも大変なのは会社員であり,さらに現在職を持たない人間は,他人からの罵倒に日々怯えながら生きていかないといけないような立場にあるのである。

飲み会は3次会,4次会まで続き,参加人数が減ってくると,徐々に場の話題はネガティブなものへと移ってきた。みんな実は我慢していたのだろう。会社という組織がいかに不愉快な場所かという話を延々聞かされた。私も正直愚痴りたいことはあったが,とても切り出せるような空気ではなかった。とにかく恐ろしいことは,今自分が所属している会社を誇りに思っている人間が,我々のグループの中には1人もいないという現実であった。

我々の30代はそんな感じで幕を開けた。みな,20代の頃は寄り道しながらも精一杯走ってきた。少し疲れがたまってきたのが今の我々だろう。この10年間をどのように過ごすかということについて,明るい未来を想像している人間は,我々の中にはいなかった。とにかく,生き残ることのみに皆関心を集中させていた。

日本は豊かな国なのだろうか。不思議になる。少なくともそこに生きる我々は,あまり自分のことを幸せだとは思っていない。他人は蹴落とす対象であり,自分もまた他人にいつでも蹴落とされる存在である。上司は信用できず,部下の言うことはいちいち腹立たしい。みんながみんなそこまで病んではいないだろうが,会社で働く人間であればそういう要素を少なからず持っているように思う。

今自分がやっている仕事の話を笑顔でする。それはもはや贅沢なことであるようだ。しかし実現不可能なことではないはずだ。30歳の友人たちに会って,私は,10年後,「今自分は何をやっている」という話を自分が出来て,友人にも聞くことができる状況になっていることを心から期待して,その場を後にした。

atmark0204atmark0204 2009/01/07 10:44 当方20代で年始に同窓会があったのですが同じような空気を感じました。思い出話よりも、遠くで暮らしている皆の近況が知りたかったので若干ものたりなさを感じました。

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