◎羽田便の割引拡大 3空港の使い勝手が増す
全日空が四月から小松、能登、富山の三空港で羽田便などの往復割引運賃の適用範囲を
拡大する。三空港を一つの空港と見なす発想であり、ビジネス客や観光客にとっては、間違いなく今よりも使い勝手がよくなる。二〇一四年度の北陸新幹線金沢開業に向け、航空会社が打てる最も有効な対抗策の一つと言えよう。新たな強敵との勝負から逃げないという同社の意思の表れと受け止めたい。
三空港の有効活用は、石川、富山県にとっても「二〇一四年」対策の重要なポイントで
あり、そのカギを握るのは圧倒的に利用者数が多い羽田便である。新しい運賃システムにより、たとえば、東京から小松空港に入り、兼六園や能登などを巡った後、立山に足を延ばして富山空港から帰京するといった日程が組みやすくなる。これを機に、両県が協力して魅力的な広域観光ルートの開発や発信、二次交通の整備などにさらに積極的に取り組んでもらいたい。
既に新幹線が開業している地域の空港を見ると、仙台、新潟、花巻などでは羽田便が新
幹線に押され、廃止された。一方、岡山では羽田便と新幹線の激しい旅客の奪い合いが続いており、結果として双方の運賃やサービスが改善された。交流人口拡大と地域経済活性化を実現するためにどちらが望ましいかは明白だ。羽田便の生き残りを図ることは、新幹線の効果を最大限に引き出すことにもつながるのである。
一般的に、飛行機と新幹線の競争では「三時間」が勝敗の分岐点と言われる。所要時間
が三時間より長ければ飛行機が有利、短ければ新幹線が有利になるという意味である。額面通り受け取れば、能登空港はともかく、小松、富山両空港の羽田便は厳しいわけだが、三空港が一体となって利便性を高めていけば、生き残りの可能性はより大きくなるだろう。
能登空港では、新運賃システムによって、便数が少ないことによる不便さを多少なりと
もカバーできよう。石川県や関係市町などもPRに努め、片道だけでも同空港を利用するビジネス客らを増やしてほしい。
◎能越へ修学旅行誘致 「体験型」の集積生かそう
能登地区と富山県西部地区の商工会議所などで組織する能越商工観光懇談会が、今年か
ら両地区一体で修学旅行の誘致に取り組む。両エリア内には、輪島塗、高岡銅器などの伝統工芸や特徴的な農林漁業が集積しており、その強みを生かして滞在体験型学習のメッカとして発信していきたい。
とりわけ中部や東海地域では、日本海へのあこがれが強いと言われており、独自性を前
面に出すなら、東海北陸自動車道沿線の山間地から富山湾沿岸をへて能登に至る山と海の体験コースを一体で紹介し、厚みのある体験学習を提案してみるのが効果的ではないか。
体験学習の誘致という点で言えば、両地区では、南砺市利賀地区で既に東京・武蔵野市
から自然体験の児童を受け入れ、七尾市も能登島の民宿に泊まり、イルカ観察や刺し網漁などを体験学習する試みを始めている。
また東海北陸道の全線開通を機に、高岡市は愛知や岐阜の三市から教職員を招き、東海
地区からの宿泊学習誘致に乗り出している。氷見市でも京浜工業地帯の父・浅野総一郎の出身地という縁で川崎市に小中学生の宿泊体験を呼びかけるなど、個々の自治体単位で取り組みのノウハウを蓄積しつつある。そうした取り組みも、官民がバラバラに呼びかけていては、両地区に総合的な誘客効果をもたらすのに十分ではなかろう。
能越商工観光懇談会の取り組みとしては、来月に富山県西部版、新年度には能登版のパ
ンフレットを北陸や中京圏の全小中学校に配布する予定だが、自治体、経済団体が共同でプロジェクトチームを作るなどして、これまで個々に進めていた誘客策を再構築し、多彩なコース設定をして、出張PRも含めた一体感のある戦略を練ってもらいたい。
学習の一環で小中学校に呼びかけることは、一定の成果を得られれば複数年に及ぶ継続
開催が見込めるほか、児童生徒の地域を超えた交流の芽をはぐくむ可能性が期待できる。リピーター作りにも役立つだけに、地域の枠を超えて取り組む価値は十分あろう。