“使い捨て労働”と批判が強い労働者派遣制度で、製造業への派遣を禁止すべきだとの声が強まっている。最近の派遣切りは常軌を逸している。政府は禁止に向けた法改正に取り組むべきだ。
東京都内で六日開かれた経済三団体の合同新年会。あいさつに立った日本経団連の御手洗冨士夫会長は雇用問題に触れ「官民挙げて雇用の安定を図るべきだ」と淡々と語った。
その前日、首都東京のど真ん中の日比谷公園では年末に派遣切りされた労働者ら約五百人が集まり「年越し派遣村」の解散集会と、国会への請願行動が行われた。
解雇する側とされる側のギャップは大きい。雇用・福祉の安全網の再構築と中長期的に非正規労働者を減らす課題は残ったままだ。
自動車や電機産業などでの最近の派遣社員や期間従業員の解雇ラッシュは目に余るものがある。経費節減や役員報酬カットなど自助努力もしない段階から派遣切りでは、国民の理解は得られまい。
舛添要一厚生労働相が個人的意見としながらも「製造業にまで派遣労働を適用するのはいかがなものか」と語ったのは当然だ。
もともと労働者供給事業は職業安定法で原則禁止されてきたが、労働者派遣法が一九八五年に制定されると派遣は急拡大した。
二〇〇四年の改正では製造業への派遣も解禁された。労働者の働き方の多様化に対処するとのうたい文句だったが、実態は企業側の労働コスト削減と手軽な雇用調整手段という使い勝手の良い労働力提供システムとなってきた。
派遣労働者は労働力調査によると〇七年で約百三十三万人。厚労省調査では〇七年度に派遣労働者として働いた人は約三百八十四万人。そして製造業派遣は約五十万人とされる。禁止する場合には受け皿づくりが必要だろう。
今国会では継続審議となっていた労働者派遣法改正案が審議される予定だ。日雇い派遣の原則禁止などを盛り込んだものだが、この際、与野党間で協議して法案の修正を検討すべきである。
経済同友会などは製造業派遣の禁止に対して国際競争力の維持が困難になると強く反対する構えだ。禁止すれば海外移転が進み失業者は増えるとも指摘する。
大事なことは経営者の姿勢だ。ある大手電機首脳は「日本企業の強さは人材にある。経営者はぎりぎりまで雇用を守るべきだ」と安易な解雇を戒めている。
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