動き出す関西広域連合〈上〉ドクターヘリは連携の翼、「いつでもどこでも派遣」シンボルに──医療・防災「具体像示す」

 
              
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動き出す関西広域連合〈上〉ドクターヘリは連携の翼、「いつでもどこでも派遣」シンボルに──医療・防災「具体像示す」

2009/01/07配信

大阪府が広域活用を検討している「ドクターヘリ」(大阪市天王寺区)
大阪府が広域活用を検討している「ドクターヘリ」(大阪市天王寺区)

関西の府県と政令指定都市の連携による広域自治組織「関西広域連合」(仮称)が今年9月にも発足する。地方分権の受け皿として期待がかかる一方、府県民の認知度は低く、新組織立ち上げの効果を疑う声も強い。こうした中で住民サービスの向上や地域発展にどれほど寄与できるのか、関西広域連合の利点と課題を探った。

 「三重県熊野市で頭部に重傷を負った患者が出た。すぐに来てほしい」。和歌山県立医科大学付属病院(和歌山市)は昨年夏、三重県内の消防本部から通報を受けた。医師を乗せた専用ヘリコプター(ドクターヘリ)を約100キロ離れた現場近くのヘリポートに派遣。患者は和歌山県田辺市の救急病院に搬送された。

 通報から約1時間で完了。「救急車で三重県内の最寄りの救急病院に搬送していたら2時間以上かかって手遅れだったかもしれない」。和歌山県のドクターヘリ担当者は振り返る。


 関西の自治体でドクターヘリを配備しているのは和歌山県と大阪府だけ。年300回以上の出動が見込まれるヘリ一機の運航費用が、専門業者への委託費などで年1億5000万円前後かかるためだ。

 隣の県に活用してもらおうと和歌山県が三重、奈良の両県とヘリ共同利用を2003年から実施しているのに続き、大阪府も09年4月をめどに和歌山、奈良の両県への乗り入れを開始する予定。京都、兵庫、鳥取の3府県は日本海側での導入を検討し始めた。

 9月にも発足する関西広域連合ではこうした流れを推進。ドクターヘリの管理・運航を関西広域連合で集約することを検討し、関西全域と周辺県にいつでもどこでも派遣できる体制を目指す。財政面から導入計画のない滋賀県や兵庫南部などでも低予算で利用できるようになる。「多数のヘリを要する緊急時も、ヘリの機動的な出動が可能になる」(京都府医療課)

 関西広域連合が発足時に取り組む主要業務(第1段階)では、ドクターヘリに代表される医療連携や、大規模災害を想定した合同訓練や分担備蓄の「防災」が目玉だ。しかし、各府県や政令市の議会などからは「屋上屋を架して行政組織の肥大化につながる」と懸念する声が上がっており、既存の行政組織のスリム化との両立が課題になる。

 関西広域連合の機能について「住民に何のメリットがあるのか」と冷ややかな見方も多い。このため、第1段階では医療連携など早期実現が可能で、住民サービスとかかわりの深い分野から始め、「広域連合の具体的なイメージを示す」(井戸敏三兵庫県知事)。公立病院の経営難などで地域医療が危機に直面する中、ドクターヘリを広域行政のシンボルとする考えだ。
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