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時評コラム

財部誠一の「ビジネス立体思考」

続「派遣切り批判をあえて批判する」

国益を最大化するには何が必要なのか

 もちろん派遣をめぐる安直な規制緩和には、財界も加担した。その意味では企業に向けられた「派遣切り批判」をまったく逃れることはできないのかもしれない。だが迫り来る世界同時不況を乗り切り、日本がこのピンチをチャンスにするには、国中が単純な派遣切り批判に明け暮れるなどというお粗末は絶対にやめるべきだ。

 12月24日、年内に1400人の非正規社員を削減するとしていたいすゞ自動車が、580人の期間労働者については、契約期間満了まで雇用することを明らかにした。しかし直接雇用していない派遣社員の契約期間前解雇の決定はそのままとされた。

 その程度の対応しかできないのかという批判もあるだろう。だがいすゞの経営状況と自動車市場の恐ろしい収縮予想のなかで、それはいすゞが今できる精一杯の経営判断だったのではないか。

 諸外国が自国の自動車産業防衛に走るなか、いすゞの対応は正直言って痛ましい。しかも今回救われる期間労働者も、数ヵ月後には契約期間満了で失業することに変わりはない。この人たちを救済しつつ、日本経済の屋台骨である自動車産業をいかに支えていくか。問題は単純ではない。

 100年に一度の経済危機のなかで、世界は強烈な生存競争を始めた。日本の国益を最大化するためには何が必要なのか。それこそがいま問われているのである。

財部誠一(たからべ・せいいち)
1980年、慶應義塾大学を卒業し野村證券入社。出版社勤務を経て、1986年からフリーランスジャーナリスト。1995年、経済政策シンクタンク「ハーベイロード・ジャパン」設立。金融、経済誌に多く寄稿し、気鋭のジャーナリストとして活躍。テレビ朝日系の『サンデープロジェクト』、BS日テレ『財部ビジネス研究所』などに出演。
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