第百七十一通常国会が召集された。初日は政府が総額二兆円の定額給付金を柱とする二〇〇八年度第二次補正予算案を衆院に提出し、中川昭一財務相の補正予算案に関する財政演説が行われた。六日に衆院本会議で、七日に参院本会議で麻生太郎首相らに対する各党の代表質問が行われ、論戦が本格化する。
秋までに必ず衆院選がある政治決戦の年だ。四日の年頭会見で首相は二次補正予算案と〇九年度予算案の早期成立の重要性を訴え、それまで解散は考えないとした。審議が行き詰まった場合、状況打開と引き替えに解散要求に応じる話し合い解散も「考えていない」とした。内閣支持率の低落やそれに伴う求心力低下にくじけず、強気で正面突破を図る構えと映った。
対する民主党の小沢一郎代表は同じく年頭会見で、総選挙を求める国民の声は「首相の政権維持の意図を超える大きな声になる」と述べ、再び強く早期の衆院解散を求めた。定額給付金についても「お金を無駄に使うようなやり方は認めるわけにいかない」と徹底的に反対する考えを示している。
両党トップが対決色を一段と強め、まさに「対決国会」といえる展開が予想される。民主党は給付金について削除を求める修正案を近く国会に提出する構えだ。麻生政権を揺さぶり、造反を誘う狙いもあろう。現に政権批判を強める渡辺喜美元行政改革担当相は、早期の衆院解散や給付金撤回などを党執行部に要求し、真剣な検討を求めた。党側は拒否の姿勢だ。
しかし、二大政党が国会の場で駆け引きに終始している場合ではなかろう。中川財務相が財政演説で「世界的景気後退の影響で輸出や生産が減少、消費も停滞」と厳しい言葉を並べるまでもなく、経済情勢は日々厳しさを増している。派遣切りに遭った人らが東京・日比谷公園などに寝泊まりし、「派遣村」が出現する事態である。東京都も対応に乗り出した。
確かに定額給付金は評判が芳しくない。政府、与党は既定の方針にこだわるべきではあるまい。民主党の政局に絡めた反対姿勢もいただけない。両党が率直に、よりよい財源の使い道を探るべきであろう。
二次補正、〇九年度予算全体をより実効性の高いものにしなければならない。まずは景気と雇用状況の改善へできる限り努力することが、政治の務めであろう。その後の政局は、より努力したと国民の目に映った側に有利に展開しよう。
パレスチナの自治区であるガザの情勢が混迷の度を深めている。イスラエル軍はガザを支配するイスラム原理主義の強硬派ハマスによるロケット弾発射を食い止めるため、空爆に続き地上部隊を展開する中、ハマス側はゲリラ戦で徹底抗戦する構えを見せている。
パレスチナとイスラエル双方に、民間人を含め多数の死傷者が出ている。両者の言い分はどうであれ、とにかく一刻も早く国際社会の仲裁で泥沼化を防ぐ必要がある。
パレスチナの和平交渉は一昨年、穏健派ファタハのアッバス議長が率いるパレスチナ自治政府とイスラエルの間で再開された。しかし、ハマスは武装闘争を続けている。
イスラエルが大規模な報復措置に踏み切ったのは、今年二月に総選挙を控えているためとされる。ハマスのロケット弾攻撃の精度は高くないようだが、イスラエル国民の恐怖心は大きい。対応を迫られたイスラエル与党が世論の支持を背景に反撃した上で、有利な条件で停戦に持ち込み、総選挙で勝利しようという思惑といわれる。
危険な賭けとしか言いようがない。地上戦ではイスラエル兵士の犠牲も避けられないだろう。深追いして被害が拡大すれば、イスラエルの世論も一転する可能性が高い。
イスラエルが強気なのは、親密な関係にある米国と英国の理解が得られているからとされる。確かに欧州連合(EU)や中東の周辺国などが冷静な対応を迫る中、米英はイスラエルの行動を容認してきた。
このため国連安保理も機能できないでいる。特に影響力が大きい米国の責任は重い。アフガニスタン政策などで国際社会に協調を求めるなら、それに見合う行動を取るべきである。
(2009年1月6日掲載)