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第8回
「丸の内はんにゃ会」代表 瀧澤由美氏・副長 奥村悦子氏 × ファンサイト(有)代表取締役 川村隆一

今日は、「丸の内はんにゃ会」代表の瀧澤由美さんと副長の奥村悦子さんとの鼎談です。お二人は、それぞれサンケイリビング新聞社で働く編集者、企画担当者でもあります。
前々回のファンサイト対談でお会いした元熊本リビング編集長で現在、東京大学大学院学際情報学府で口コミを研究している野口美都さんから「丸の内はんにゃ会」という、ちょっと変わったグループがあると、教えていただきました。
しかもこの会のメンバーは、現役の丸の内で働くOLの方々で、仏教や日本文化を趣味として楽しんでいるグループとのこと。一体どんな方々なのか興味津々。ともあれ、お話を伺わねばと、野口さんにセッティングをお願いした次第です。

「丸の内はんにゃ会」代表 瀧澤由美氏・副長 奥村悦子氏 × ファンサイト(有)代表取締役 川村隆一
●はんにゃ会発足のきっかけは「写経」!?
川村 まず最初にはんにゃ会とはどんな活動をしているのかを教えてください。
瀧澤 もともと奥村が趣味で写経をやっていて、その流れで私が取材したのが始まりです。
五反田にある薬師寺の東京別院に伺い、OLを対象にした写経の体験をしたのがきっかけでした。実際、自分でやってみて、スッキリするというか、クセになるというか。般若心経を上からなぞりながら書くのですが、なぜか気持ちよくて、通い始めたんです。他の編集部の人にも声を掛けて誘って行くと、以外と皆ハマるんです。
そうこうしている内に、薬師寺のお坊さんたちとも仲良くなり、去年の夏、奥村と二人で、奈良の薬師寺さんに旅行で出かけたんです。
そこでまた、新たなお坊さんや薬師寺の一番偉いお坊さんである、安田暎胤管主にもお会いすることが出来たんです。朝5時から始まる勤行という修行の1つにも参加することができました。その時いただいた薬師寺の広報誌を読んでいたら、例えば「京都まほろば会」とか「滋賀まごころ会」といったグループがあって、私たちもこんな会を作りたいね、と話し合ったんです。
で、私たちは丸の内のOLだし、般若心経が好きだから「丸の内はんにゃ会」と、宿泊していた旅館で朝、命名したんです。そして、具体的に何をしようかというのは後から、考えてカタチにしていったのです。最近では、お坊さんをお招きしてのお説法や懇談会もやっています。
川村 いまメンバーは何名いるのですか。
奥村 45~6名です。
川村 こう言っては失礼ですが、以外と沢山いらっしゃるんですね。
瀧澤 誘うと気楽に参加してくれる人が多いですね。私たちの回りの丸の内のOLの方々に聞いてみると仏教や日本文化をもっと知りたいと思っている方が予想以上に多いことが分りました。
川村 きっかけは写経からですか。
瀧澤 そうですね。でもなんだかよく分らないけれど、面白そうだからと入ってこられる方が多いですね。
川村 ところで、写経をしていて気持ちがいいと言っていましたが、それはなにかしら浄化されるという感覚でしょうか。
奥村 仕事をしていると、いっぺんに様々なことを考えなければいけないことが多いんです。ところが、写経をしている間は、写経だけに没頭していればいいのが気持ちいいのです。
瀧澤 例えば、今日仕事で嫌なことがあったとしても写経をし始めると忘れてしまうんです。なにしろ一文字一文字が難しいのでそれを、写すことに集中して、嫌なことなど忘れてしまいます。むしろ、書き終えた後、達成感さえあります。
●はんにゃ会は「お坊さんファン」が始めた集まり
川村 なるほど、こうしてお二人のお話を伺っていると、仏教オタク、あるいは仏教ファンということになるのでしょうか。
瀧澤 私はお坊さんファンです。
川村 お坊さんファンということは、つまりお坊さんの修行してきた厚みのようなものにひかれるのですか。
瀧澤 違います。そうではなく、カッコいいんです。例えば、般若心経をそらで詠んでしまえるとか、袈裟が素敵だったり、お話が面白かったりということです。ともかくお話が面白いんです。人生訓のようなものを重くなく、分りやすくお話してくれるんです。
川村 カリスマ性があるんですね。
瀧澤 ありますね。でも、それよりもアイドルに近いかも。(笑)
奥村 カッコいいんですよ。(笑)
瀧澤 仏法作法の動きは、厳粛でカッコいいんです。でも、懇親会などでお酒を飲む機会がありますが、その時は以外と気さくで、親しみやすい方が多いんです。
川村 はんにゃ会の皆さんは、どんなところに興味をもって入会するのでしょうか。
瀧澤 珍しいからじゃないかな。いま、女性を取り巻いている習い事は数多くあります。例えば、お料理、ダンスなどは、取っ掛かりも沢山あります。でも、写経とかお坊さんとお話をするという機会はなかなか無いと思うんです。だから、変わった趣味として、物珍しさも手伝って入会してくる方が多いですね。
奥村 この会の女性たちは、20代後半から30代の方が多いんです。これまで一応、様々なことをやってきている。
でも、さすがに写経や仏教に関しては、あまり知らない。でも、知りたいと思っても一人じゃ写経に参加しにくいし、お寺に出かけるのも少し不安だと。でも、なんか楽しそうにやっている「はんにゃ会」となら気楽に参加できるかなって。
川村 いま、若い人の中に、古いものを再発見したいと思っている方が以外と多くなっているという話を聞いたことがあります。そうした流れとも重なるのかな。
瀧澤 そういえば最近、私たちの回りで、和服の着付けを習う人が増えています。
奥村 はんにゃ会のメンバーでも、着物で生活したいと人が以外と多いですよ。なんでもない時に着物を着て飲みに行きたいなって言うと、すごく反応する方が多いですね。
川村 以前、仕事で新潟の巻町にあるお寺に泊ったことがあるんですが、朝、障子から差込む光と、本堂から聞こえてくるお経の響きが妙に気持ちが良くて、心が揺さぶられたことがありました。なんと言ったら良いのか、身体の奥にある日本人としてのDNAが反応したような・・・。
瀧澤 それに似た体験を私も感じたことがあります。お経を聞いて感じるものも日本人のDNAというやつですね。
「丸の内はんにゃ会」代表 瀧澤由美氏・副長 奥村悦子氏 × ファンサイト(有)代表取締役 川村隆一
●はんにゃ会を「ファンサイト口コミ指数」に当てはめてみると・・・
川村 それは、絶対あるように思います。ところで、なんで人はファンになるのかということが知りたくてファンサイトという会社を起こし、こうしていろいろな方々からお話を伺っているのですが、そこで見えてきたことがあります。それは「ファンの連鎖を生む口コミには法則性がある」ということです。それを僕は「口コミ指数」と呼んでいます。
1.特性がはっきりしている
2.ストーリーがある
3.リピート性がある
4.カリスマがいる
5.ターゲットがはっきりしている
6.美しくなりたい、安らぎたい、健康になりたい等、潜在的ニーズがある
これまでお話を伺って、瀧澤さんと奥田さんが、口コミで集められた「丸の内はんにゃ会」もこうした指数が当てはまるような気がするんですが、いかがですか。
瀧澤 いま、私も聞いていて、全部当てはまると思いました。実際に写経を自分たちがやってみて、楽しいと思い、これなら同僚にも勧められると思いました。それに、薬師寺のファンとして、ファンが増えれば薬師寺にとっても嬉しいことですし、自分たちも嬉しいことですから。(笑)
川村 お二人は薬師寺にとって、凄い推奨顧客ですね。ファンサイトでは、お二人のようなファンをプラチナファンと呼んでいます。
瀧澤 そうですね。かなり新規顧客を紹介していることになりますね。(笑)
奥村 相当な広告塔になっているかも。(笑)
瀧澤 若いOLの方々に「写経の面白さを伝えた」という実績はあると思います。
川村 それは、本当に凄いですね。
瀧澤 最近取材していて女性だけではなく男性にも感じるんですが、単にモノを買って満足するということでは終わらない、何かがあるように思うんです。人から与えられて満足するのではなく、自分で何かをやり、そのことを通して精神的に何かを得るというような・・・。おいしいモノを食べて、素敵なバッグを買って終わりじゃないという何かが。精神面で充実感が欲しいと思っているんです。こうした気分をみんなで共有できたらいいなって。
川村 前回、KDDIでau design projectデザインディレクターとして活躍していた小牟田さんとこの対談のコーナーでご一緒させていただきました。その小牟田さんからお聞きしたのですが、少し前まで、トヨタ車のライバルはホンダでもニッサンでもなく、携帯電話やゲーム機器だったと、しかし最近では「買わない」という選択枝がライバルになっていると。
瀧澤 わかる。
奥村 そうですね。
瀧澤 買うというか、所有するという考え方に疑問を感じる人が現れてきているように思いますね。
川村 僕も、自分が買わないという選択枝を選ぶという消費者が多くなるのではないかと思います。「丸の内はんにゃ会」の人たちがモノではなく、仏教や写経に興味をもつことの底辺にあるのは「自己満足のためのモノの消費」というこれまでの方向ではないベクトルで考えている人が増えているのではないかと。もしそうだとすれば、マーケティングの仕事に関わっている僕たちにとって、これからの消費者はますます手強い相手になるということですね。
瀧澤 その通りだと思います。
奥村 般若心経の般若はもともとサンスクリット語で語源は「智慧」という意味です。よりよく生きていくための智慧を身につけるとの想いを込めたものです。その理想に向かって、これからも楽しく写経をし、仏教を学んでいけたらと思っています。
川村 今日は、お二人とお話することができて楽しかった。本当にありがとうございました。
瀧澤 こちらこそ、ありがとうございました。
奥村 ありがとうございました、楽しかったです。