赤ちゃんをトイレやおまるで排せつさせる「おむつなし育児」。津田塾大学の研究チームなどの取り組みを昨年8月、本紙で2回に分け紹介したが、このほどその研究報告会が同大で開かれた。おむつなし育児を実践中の夫婦ら約120人が参加し、排せつを通じて赤ちゃんと深くかかわる喜びを確認し合った。【中村美奈子】
■かつては一般的
報告会では、研究チームの三砂ちづる国際関係学科教授(母子保健)が、07年から行っている調査の概要を説明。70代以上の高齢者7人に聞き取り調査を行ったところ、全員がおむつを外す前から庭先で子どもにおしっこをさせ、無理しなくても2歳までにおむつが取れていた。
赤ちゃんにもパンツをはかせるさくらんぼ保育園(埼玉県深谷市)など、保育園3カ所でも聞き取り調査を実施。さくらんぼ保育園では、園で過ごす平日はおしっこの間隔が長い子も、週末に家庭で紙おむつを使うと、週明けには少量のおしっこを頻繁にもらすことが多くなるという。
■サインいろいろ
また、研究チームの呼びかけで昨年4月から半年間、妊娠中から生後半年までの子どもの母親約40人がおむつなし育児に挑戦。今では全員が日常的に子どもをおまるやトイレで排せつさせられるようになった。実践の分析をチームの和田知代さんが報告した。
排せつのサインは子どもの月齢や個性によって異なる。「待っててね」と声をかけると、おしっこを待ち、▽授乳中に乳首をくわえたり離したりし始める▽目が合う▽またに手を当てる--がサインとして多かった。さらに、生後4~6カ月ごろからおまるを嫌がり始めたり、つかまり立ちの時期には男女とも立ち小便が好きな傾向も見られた。
■情緒も安定
報告会では、実践した母親たちが体験を次々に発表した。
生後5週間から、長男のおむつなし育児を始めた堀田史恵さん(32)=横浜市=は「生理的な欲求がすぐに満たされるせいか、子どもは情緒が安定しているようだ」と発表。「トイレでうんちが出ると私を見上げるので、『もう1回やる?』と聞くと、また出る。まだ話せない子どもと、そんなコミュニケーションを取れてすごく幸せ」
長男が生後6カ月の時に始めた寺田麻衣子さん(33)=埼玉県所沢市=は「排せつのリズムが整うと世話がしやすい」と報告した。
続く交流会では、各家庭のやり方や経過を話し合った。長男に生後2カ月で始めた長尾朋貴さん(35)、典子さん(36)夫妻=福岡県筑前町=は、長男の起床直後や授乳後を排せつタイムと決めている。朋貴さんは「子どもが大声を出すとすぐおまるにかけるが、大体おしっこが出る。おまるにさせてから、外出中にうんちをしなくなり、結果的に楽になった」と語った。
研究チームは、今年5月まで母親たちにおむつなし育児を実践してもらい、来年度以降、本にまとめる予定だ。
毎日新聞 2009年1月4日 東京朝刊