官庁や多くの企業は5日、仕事始めを迎えた。景気失速で待ったなしの対策を迫られる厚生労働省は「ひと、くらし、みらいのために」というキャッチフレーズを発表。これに対し、東京都の石原慎太郎知事は「現場を知らない」と国を批判した。一昨年、昨年と不祥事に明け暮れた防衛省は「忍耐」を強調した。
■厚労省
厚生労働省が発表したキャッチフレーズは厚労行政のあるべき姿を示す新しい試みで、職員から寄せられた1513件の中から若手職員のチームが決め、名刺や封筒に印刷して意識徹底を図る。昨年7月に決めた新たなシンボルマークのバッジも作り、新年から職員が着用を始めるなど、年金記録問題や後期高齢者医療制度への批判を踏まえ、イメージアップに懸命だ。
年末のハローワーク窓口業務や「年越し派遣村」への施設開放などで、正月休みを十分に取れなかった職員も多い。舛添要一厚労相は5日の閣議後会見で「厳しい経済状況の中あらゆる手を打って生活を守っていく」。ある幹部は「厚労省が批判されるのは国民にとって大事な役所だということ。かつてない不況だからこそ存在感を発揮したい」と語った。【清水健二】
■防衛省
一昨年の事務次官汚職や情報漏えい事件に続き、昨年もイージス艦衝突事故や前航空幕僚長の懸賞論文問題で揺れた防衛省。5日は国会開会日と重なり、浜田靖一防衛相の年頭訓示は録音で全部隊向けに放送された。
浜田氏はその中で、「大変多くの問題ばかりがクローズアップされた」と昨年を振り返った。年末に任務を終えた自衛隊のイラク派遣は「国内外で多くの評価を得た」と力説しつつ、「信頼と忍耐、この言葉を胸に掲げながら今年1年過ごしたい」と結んだ。
浜田氏は閣議後会見で「耐えに耐えて国民の信頼回復を目指すことだ」と解説した。【本多健】
■都庁
東京都の石原知事は、職員への新年あいさつで派遣労働者問題などに触れ「本当に国ってのは大事な現場を知らない」などと国政批判を展開した。
仕事や住居を失った派遣労働者を都や区の施設が受け入れたことについて「国は現場ってものがないから、結局都に頼らざるを得ない」と言及。法人事業税が一部国税化されたことには「国が都のために何をしたかっていったら、3000億(円)かっぱらった。勝手に法律変えて。こんなメカニズムはおかしい」と語気強く批判した。【須山勉】
毎日新聞 2009年1月5日 東京夕刊