新しい宿泊所に移り、入所手続きをする元派遣労働者ら=5日午後、東京都中央区、細川卓撮影
東京・日比谷公園の「年越し派遣村」で年末年始を過ごした約500人のうち286人が5日、「閉村」に伴い、東京都や中央区が用意した施設に移った。1週間、都が食事を提供し、東京労働局は関東圏を中心に約3千人分の寮付きの就職先を紹介する。
千代田区役所では、派遣村にいた75人が生活保護を申請し、医療機関で診療を受ける必要がある人など10人には即日支給された。ほかの申請者は後日、再び面接を受ける。同区は通常より早い1週間程度で結果を出すという。
申請した男性(56)は千葉県の建設会社に派遣されていたが、「仕事がない」と告げられ、昨年暮れに寮を出て、路上生活をしていたという。「住まいがほしい。今は次の仕事のメドも立たず、不安でいっぱいだ」と言った。
中央区が用意した小学校跡の一つに5日夕、約80人がバスで到着した。大きな荷物を両手に、毛布やストーブが用意された体育館に入った。昨年末から派遣村にいたという男性(46)の所持金は65円。「寝る場所ができて助かった。仕事を見つけ、今年こそ普通の年にしたい」と話した。
各施設には、健康や就労に関する相談員が常駐する。施設の提供は12日までで、都は「自助努力が大前提で、今回は人道的観点からの措置。期限までに仕事と居場所を見つけてほしい」としている。
厚生労働省の調べだけでも、3月までに職を失う非正社員数は8万5千人を上回る見込み。村長を務めた湯浅誠・NPO法人自立生活サポートセンターもやい事務局長は「職と住居を失った人々が緊急的に保護され、生活について総合的に相談できる窓口がある施設を国の責任で作っていく必要がある」と訴えた。