日本海新聞旅行部


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題字は柴山抱海氏  二〇〇九年が幕を開けた。世界的な景気悪化の影響で、派遣社員ら非正規労働者の「雇い止め」、新卒者の採用取り消しなどの雇用不安が高まり、地域にも閉塞(へいそく)感が漂っている。しかし、その中でも希望を持ち、新たな一歩を踏み出し、明日を切り開こうとする人がいる。年間企画『自照自輝(じしょうじき)』。この厳しい時代に、われわれは、地域はいかに自らを照らし、輝きを発するか。第一部のテーマは「働く」。前向きに力強く生きる人たちを追う。
2009/01/06の紙面より
第1部 「働く」 (4)女性と出産

仕事も子育ても楽しむ

昨年4月、弁当の店を併設した。週に3、4回来店する客も。生き生きとした表情で接客する山根=鳥取市瓦町の店内
 仕事と子育てに楽しさとやりがいを見いだし、たくましく輝いている女性がいる。

 鳥取市にあるカフェのオーナー山根綾野(32)。古い町家を改装した店内で、厨房(ちゅうぼう)やカウンターを行ったり来たり、てきぱきと動く。二十七歳のとき、市内でカフェを営んでいる夫と結婚。四歳と一歳の母親でもある。

■周囲の支え

 第一子、第二子とも出産して半年で現場復帰。最初に直面した問題は子どもの病気だった。しょっちゅう風邪をひいて熱を出した。保育園を休ませては近くに住む姉や両親に預けるが、カフェを休まざるを得ないときもあり、母としてオーナーとして「責任が果たせない焦りや自己嫌悪」が募ることも。

 それでも続けてこれたのは同業の夫や両親、スタッフや客の支えがあったからこそ。カフェは今年三月で七年を迎える。「おいしかったよ」。そう言って客が何度も足を運んでくれることがうれしい。そして何よりもケーキを作ること、料理を作ることが楽しい。

 休日など空いた時間は子どもたちと過ごす。自分の時間はゼロに近くなったが、仕事が充実しているから、不満はない。

 カフェの店長を任されている小坪愛民(24)は「いつか自分の店を持ちたい」と夢を抱きながら働く。「綾野さんのバイタリティーやエネルギーが自分の頑張る力になる」。「目には見えない」一番大切なものを学ぶ日々だ。

 人は一日の三分の一の時間を働くことに費やす。だからこそ「仕事が楽しくないともったいない」。仕事も子育ても楽しもうとするしなやかな強さが自らを輝かせ、周りをも照らしている。

■時間の限界

 平家美由紀(38)は十年ほど前から理学療法士として鳥取市内の病院で働く。子どもは二歳の男の子一人。夫は単身赴任で、実の両親と同居している。

 母親が夕食の準備などをしていてくれるので「とても恵まれている」と思うが、それでも子どもと接する時間が少ないと感じている。

 朝八時に保育園に送り、仕事が終わった夕方五時半ごろに迎えに行く。ばたばたと動き回る姿に「頼むからじっとしてちょうだい」と心で叫ぶ。寝かしつけるまでの三、四時間は、またたく間に過ぎていく。

 なぜ働くのか? 正直に言えばお金が必要だから。必要最低限の生活なら困らないかもしれないが、買い物に行けば子どものために何か買ってやりたいと思う。

■喜びを共有

 平家はリハビリを担当している。病気やけがなどで歩けない、腕が曲がらないなど訓練が必要な患者と一対一で向き合う。昨日できなかったことが今日はできる喜びを分かち合う。「先生のおかげでよくなりました」。やりがいを最も感じる瞬間だ。これから先も「今のこの仕事だから続けていける」。自信を持ってそう言える。

(文中・敬称略)
鳥取県の女性就業率と合計特殊出生率 2005年国勢調査によると、県の女性就業率は50.3%(全国平均46.4%)で全国6位。一方、同年の合計特殊出生率(女性1人が生涯に産む子供の推定人数)は1.47(同1.26)で全国8位。県内の女性は有業率・出生率とも高い。
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