08年も押し詰まってきたクリスマスイブの午後。子連れの家族が楽しく食事をする北上市内のファミリーレストランで、2人の男女が趣味や仕事の話で談笑していた。恋人同士にも見えるが、理彩さん(36)=仮名=が直人さん(37)=同=に会うのはこの日が初めて。2人はお見合いに臨んでいた。
主催する結婚相談所、プロデュースMサトウでは「お出会い」と称し、堅苦しさをなくす目的でホテルのロビーや喫茶店を一期一会の場に選んでいる。
結婚相談員を交えて30分、2人だけで1時間話した。ただ、理彩さんは相手が自分の結婚条件としている「自分自身をさらけ出せる人」ではなさそうだと感じ、その場で結婚相談員に断りを入れた。16人目のお出会いも縁がなかった。
理彩さんはパッチリした目が特徴で、30歳代前半にも見える。性格も明るく、結婚していても不思議ではない。
20歳代は結婚を考えていなかったが、30歳を過ぎて子どもを産める時間を意識するようになった。一人娘のため両親の面倒もみなければならない。何よりも、自分自身を表現する場が仕事しかないことにさみしさを感じた。「誰かに認められたい」。結婚願望が芽生えた。
ただ、すでに会社の同僚や友達のほとんどが結婚していた。出会いを求めてサークルに入ったが、友達の一線は越えられなかった。自力で探せなくなり、06年8月、結婚相談所に登録。34歳だった。
総務省の05年国勢調査によると、30~34歳の3割強、35~39歳の2割弱の女性が未婚者という時代。結婚や出産、仕事の分岐点にいる40歳前後は「アラフォー」と呼ばれ、昨年の流行語大賞にも選ばれた。市民権を得たように見えるが、理彩さんは「社会的に認められていない」と否定的だ。会社で既婚女性が休暇を取る時はすぐに認められ、理彩さんは難色を示されたことがあったという。「同じ女性なのに」。唯一、自分自身を出せる職場でも嫌な気分を味わい、結婚への思いは強まる。
世間の目。出産。両親の存在。内に外に不安を抱えながら、運命の人を探す理彩さん。「焦っても仕方ない。私を認めてくれる人に会えるまでお出会いを続けようと思う」。その声は自分を励ますために言い聞かせているようだった。【安田光高】=つづく
毎日新聞 2009年1月4日 地方版