名古屋市営地下鉄で走るラッピング車両。現在は1編成だけになった=名古屋市中区の地下鉄東山線伏見駅
全国各地の公営地下鉄が、電車の車体を使った「ラッピング広告」のスポンサー確保に苦戦している。始まった当初は物珍しさから強烈な印象を振りまいた。しかし、駅での到着・出発の短時間しか広告効果がないことなどから、募集しても応募がない自治体もある。
名古屋市交通局は01年12月に市営地下鉄の名城線で初めてラッピング車両を2編成走らせた。この時の広告主は大手の清涼飲料メーカー。その後、別の広告も確保できて運行数は順調に伸びた。ピークは05年の愛知万博期間中。万博が開幕した直後の同年3月末時点では、三越名古屋栄店の専門館「ラシック」や中京テレビなど8編成が運行された。
しかし、万博が終わると徐々に減り、昨年3月末時点になると3編成に落ち込んだ。現在は、化粧品販売会社のセプテムプロダクツ(名古屋市)が東山線に1編成を走らせているだけだ。
同じラッピング車両でも、市バスの広告は順調で、01年夏の開始以来、90台前後で推移している。街の中を走る路線バスは利用者以外にもアピールできる。だが、名古屋市交通局の担当者によると、地下鉄は「駅のホームでしか見られず、駅と駅の間では広告効果がない」。広告費以外にも、ラッピングの張り付けや撤去にかかる約1300万円はすべて広告主の負担になる。
05年10〜12月に名城線と東山線で走らせていたNTTドコモは、地下鉄でのラッピング広告をしなくなった理由について「ほかの広告媒体も検討しながら、費用対効果で考えた」と話す。
東京都営地下鉄では05年度、大江戸線に3編成が運行されていたが、今年度は1編成にとどまった。1カ月当たり150万円だった広告料を昨年度から100万円に値下げしたが、効果はないという。福岡市営地下鉄は昨年6月から募集を始めたが、運行数は現在はゼロだ。