川崎博士のバラ比較
川崎ローズファン愛用の 『折り紙 夢World』と『折り紙 夢World - 花と動物編』。 最新の『博士の折り紙 夢BOOK』。そして知る人ぞ知る『バラと折り紙と数学と』。 これらの書籍に掲載されているバラの折り図は、単に折る手順や説明方法の違いだけではありません。 実は完成形の違いから、細かく6種類に分けることができるのです。 つまり福山ローズも含めると川崎氏考案のバラは最低でも7種類ということに! 皆さんはこれらの違いをご存知ですか?
タイプ | 上正面 | サイド1 | サイド2 | 底面 |
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# 1 | ||||
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# 4 | ||||
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# 6 | ||||
タイプ | 上正面 | サイド1 | サイド2 | 底面 |
知る人ぞ知るこの『バラと折り紙と数学と』の初版は1998年9月。
本全体の2/3は様々な作品の折り図で、残りの1/3は数式や展開図を伴う数学の世界。
川崎氏ご本人曰く、
「使っている数学は中学の幾何程度(三平方の定理や三角形の内心など)です。
数学が苦手な方でも、第4章折り鶴の変形の中の展開図を折ってみれば、
折り鶴の奥深さやおもしろさが感じ取れることでしょう。」とのこと。
さすがはこの道で博士号を取得された川崎氏。ご本人の格調の高さがよく表れている、
とても独特な構成の折り紙本です。
このタイプ1は「バラのつぼみ」という名前で掲載されています。川崎氏考案のバラ全てに共通する
ねじり折りの立体化がベース。
ただし、他のバラと決定的に違うのは底面に手裏剣型のガクができる点。
ですから、両面異色の折り紙で作れば、
左の写真のように金の花に緑のガクと言った、オシャレな作品に仕上げることもできるのです。
しかもスルッと折り込み、ぴたっと止まるこのガク作りの仕上げ工程はちょっと快感?!
このガクを作る工程は現在までのところ他のタイプには見られないので、このタイプに独自のものと言えるでしょう。
次のタイプ2のように、最後の折り返し工程で、ひっくり返してかぶせるなどの慎重さを要する
作業がない分、仕上げの工程は比較的簡単。ただし、ねじり折りを立体化してから、
折り線をつけながら立体中割りをするのは、なかなかつらいものがあるので、
私は立体化する前にこの折り線をつけています。
(= 工程11が終わった時点で、工程23〜26の作業をしてしまう。それから巻いて立体化する。)
この辺りは『夢WORLD 花と動物編』のp.61 工程14〜23が「作業の流れ」の参考になるかもしれません。
真打ち登場?!川崎氏によるバラの中でも最も難易度が高いとされ、 非常に美しく、とても人気のある作品です。 その難易度から、このバラは近年に考案されたものと勝手に思っていましたが、と〜んでもない! この作品は1980年代後半には既に考案されていて、 約20年の長い歴史を持つ作品とのこと。
初出の時期に興味があって、以前に私がNOA筑後の旧連絡板(掲示板)にて質問をしたところ、 代理人の岡様、そして川崎氏ご本人様より詳しいご回答をいただきました!何ともうれしいやら恐縮やら。 気になるその内容は以下の通り。
1989年12月にイタリアに行ったときには展示しており、New Roseとか なんとか説明していたような気がします。 ただ、完成してすぐに作品のみを披露することはめったにないので、 半年から2年前くらいにできていた可能性があります。 89年の3月にブラジルに行ったときに展示していたかどうか調べれば、 完成時期を絞り込むことができると思います。
1989年秋にイタリアで“New Rose”と紹介したバラは、アルバムや妻の記憶によると、 1989年8月〜11月にできていたようです。
巷ではこのタイプが、川崎ローズとして呼ばれることも多いように思いますが、 厳密に区別するのであれば、川崎ローズというのはやはり後述のタイプ3や6の 原型(?)モデルのことで、こちらの最も難易度の高いタイプ2は、 実はNew Roseと呼ばれるべきなのかもしれません。 もちろん川崎氏によるバラは全て川崎ローズでいいじゃん、 というご意見もおありでしょうが。
この最も難しいとされるバラの折り図は、
1998年9月初版の『バラと折り紙と数学と』では「バラ」、そして
2003年8月初版の『折り紙 夢WORLD 花と動物編』では「薔薇」
というタイトルで収録されています。
これら二つの書籍の折り図の違いは、
前者の発行から5年たって発売された後者の方が、
当然ながら説明がより丁寧で細かい、ということ。
後者『折り紙 夢WORLD 花と動物編』にて改良された点については、
の2点が挙げられるでしょう。
この作品に初めて挑戦する場合は、ある程度強度のある紙を使うのが理想的。 またこの作品は横から見た時に裏面の色が出てしまうので、 両面のタント紙や和紙がオススメです。
ところで私には、底面をいかにきちんと角が整った正方形にできるかで
この作品の勝負が決まるという妙な自分的こだわりがあります。
これを実現するためのポイントは、p.61、工程20の点線の斜線。
この斜線をきちんと小さな四角目地の対角線上を通して谷折りすることです。
特に★印の左上、ちょうど斜線全体の真ん中あたりは、
きちんと縦横の十字目地と交差させることがポイント。
ちなみに右の見本は自分的には85点くらいでしょうか。
まあ、そうは言っても「多少崩れてても底なんてどうせ見えないんだからいいじゃん」
という方には全く持って無用なうんちくなんですけどね。(^^;
いわゆる“汽車の(表紙の)”『折り紙 夢WORLD』掲載のバラ。
このタイプのバラは、巷では時につぼみのようなバラ、などと表現されることもあるようです。
その理由は恐らく次でご紹介するタイプ4が、同じ本、つまり“汽車の”『夢WORLD』の中で、
「応用・ひらいたバラ」という題名で紹介されているからでしょう。
同じ本に載っているタイプ4が「ひらいたバラ」なら、
こちらのタイプ3は「ひらいていないバラ?」→「つぼみのようなバラ?」と
いう発想になるのは自然なのかもしれません。しかしながら、
先にご紹介したように、「バラのつぼみ」というれっきした作品が
『バラと折り紙と数学と』に載っているので、
つぼみのようなバラという表現も、そちらの方にのみ使う方が、
混乱を招かないかもしれません。
このタイプ3の折り方にわずかな変化を加えると、後述のタイプ6になります。 なお、この“汽車の”『夢WORLD』の初版は2001年7月1日ですが、 NOA筑後のデータベース おりがみ「いろは」によれば、その16年前の 1985年に出版された『ビバ!おりがみシリーズ2 - トップおりがみ(笠原邦彦氏編著)』に この作品の折り図は既に登場していたとのこと。 ということは、このタイプが7種の中で最も古いバラなのでしょうか? だとすればやはりこれが元祖で、本来の川崎ローズ、そしてNew Roseの元になったバラなのでしょうか? いつかまた機会があれば、各作品が考案された時期や順番について伺ってみたいものです。
このタイプは、先のタイプ3の仕上げに手が加えられ、
「応用・ひらいたバラ」という題がついたものです。
変化はほんの数工程なのに、これだけで見事に一番外側の花びらが開くのには感動しました。
ところで、この「ひらいたバラ」と 「福山ローズ」は、 その完成形がほぼ同じように見えます。けれど、実は これら2つには違いがあるのをご存知でしょうか? それは花芯作りの工程とそこでできる折り線の角度にあり、 展開してみればさらにはっきりと分かります。 「ひらいたバラ」は、前述のタイプ3を基盤としているため、 花芯裏から花びらの端まで届く折り線の曲がる角度がとても急。 花芯は指で引き上げて開くことになります。 (詳しくは汽車の『夢WORLD』p.77の工程34〜38で。) これに対して、福山ローズでは花芯を作る際に、後述のタイプ6と同じ技法が 使われているため、花芯は指で引き上げて開くのではなく、 折っていく中で自然な曲線として立体に仕上がるのです。
余談ですが、このタイプ4のアレンジ版と取れる 「福山ローズ」は、「折りばら」の別名であり、 市のシンボルがバラである広島県福山市の 指定作品的存在なのをご存知の方も多いでしょう。 その折り図は、福山ばら祭の公式サポーターグッズである折り紙セットに同封されているほか、 こちらの 福山工業高校のサイトでも公開されています。しかし、 今回ご紹介申し上げている川崎氏の4冊の編著の中には、 この福山ローズと全く同じ完成形に仕上がる折り図は含まれていません。
こちらは「一分ローズ」と題され、“バラの表紙の”『折り紙 夢WORLD 花と動物編』に
収録されているものです。
慣れれば1分で作れる最も簡単なものという位置づけですが、 正直言うと私にとっては、これが一番美しく仕上げるのが難しいなぁ〜という作品。(^^; その理由は折り線の明確な目安が示されていないため、その時々によって形が 大きく変化してしまうから。ところが、うちの母に言わせばこれが最も バラらしく見えるそうで、 正確な左右対称(幾何学的)ではないために、 逆に自然に感じるのかもしれません。
折り図については、2003年8月初版の『折り紙 夢WORLD 花と動物編』に収録の他、 日本折紙協会の月刊誌、2000年8月号の『おりがみ 300号』でも ローズ・アズ・ユウ・ライクとして掲載されているとのこと。 Rose as you like、つまり敢えて明確な折り線の終始点を指定しないことで、 各自が好きなように折れる、という自由度の高さを意図して考案された作品なのでしょう。
個人的にはこの作品のポイントはp.58の工程6、7あたりで、 1,2,4の花びらの高さをいかに上手く調整するかにかかっている気がします。 とは言え、未だに自分で納得のいくものを作れた試しがないのですが。orz...。
元祖?川崎ローズであるタイプ3に微妙な変化が加わったもの。
2006年12月初版発行であるこの『博士の折り紙 夢BOOK』には、
「筆者の名刺がわりともいえる作品です。
海外で“Kawasaki Rose”と呼ばれています。」と紹介されています。
このことから、やはりタイプ6、ひいてはその原型と見られるタイプ3が、
本来の川崎ローズと呼ばれるべき作品と言えるのではないでしょうか。
ではこのタイプ6とタイプ3との微妙な違いとは何でしょう? それは花芯の開き方とその裏の折り線の角度ではないでしょうか。 花芯は指で引き上げて開くのではなくて、事前につけた折線を使って、 全体を丸くたたんでいく過程で、自然と立体に出来上がるようになっています。 その結果、タイプ3よりもこのタイプ6は花芯の開きが若干狭くなり、 より引き締まった印象を与えているのです。 これについては下記の「おまけ:近似バラ4種の相対表」も併せてご覧ください。
閉じた外側の花びら | 開いた外側の花びら | |
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広い花芯 |
タイプ3 “汽車の” 夢WORLD |
タイプ4 “汽車の” 夢WORLD |
狭い花芯 |
タイプ6 博士の折り紙 夢BOOK |
福山ローズ 福山工業高校サイト |
以上、2007年5月時点での私りティ個人のまとめでございました☆
間違いのご指摘、改良案、その他コメントありましたら
ぜひ掲示板までどしどしお寄せください。m(_ _)m