阪神間と大阪・ミナミを結ぶ阪神電鉄の新線「阪神なんば線」が3月20日、構想から60年ぶりに開通する。一方、商業施設では昨秋、西宮市に「阪急西宮ガーデンズ」がオープンしたのをはじめ、今年秋には尼崎市にも「キリンガーデンシティ」(仮称)のオープンが予定されるなど、大型店の出店計画が目白押しだ。深刻な不景気が世界を覆い、阪神間だけは別天地とはいかないだろうが、地域の魅力を発揮するチャンスとなる09年が幕を開けた。【幸長由子、中里顕】
昨年11月26日、西日本最大級の複合商業施設「阪急西宮ガーデンズ」がオープンした。来店客は、プレオープンから12月22日までで231万人。1日平均7万人で、予想の5万人を大幅に上回り、上々の滑り出しだ。
ガーデンズは、阪急百貨店をはじめ、268のテナントが入っており、このうち69店舗は関西初出店。売り場面積は約25万平方メートルにも及ぶ。
ガーデンズは、甲子園、甲東園など「園」がつく地域が七つある土地柄を意識して、「地域の人たちが集う公園のような場所」を目指す、という。名前も「庭」を意味する「ガーデンズ」にした。樹木が植えられ、芝生広場が広がる屋上庭園「スカイガーデン」もある。入居する阪急百貨店の食品売り場は年末、洋風のオードブルやシャンパンなど、年末年始の食材をあれこれ品定めする客らでにぎわいをみせており、リッチなファミリー層をターゲットにする戦略はまず、当たっているようだ。
開発した阪急電鉄は「魅力ある施設を作って、街の魅力をアップし、沿線の価値も上げたいと考えた」と実績に手応えを感じている。
今年10月には、尼崎市のJR尼崎駅北側に阪神百貨店などが入る複合商業施設「キリンガーデンシティ」がオープンする予定だ。ガーデンシティができるのは、JR尼崎駅北側にあったキリンビール尼崎工場の跡地。ここで進む土地区画整備事業「あまがさき緑遊新都心」の中核的な商業施設となる。阪神百貨店のほか、シネマコンプレックスが入ることになっている。
開発を進めるキリンリアルエステートは、「JRの東海道線、福知山線、東西線の3路線が交差しており、他地域からの利便性も高い」と出店の理由を説明する。周辺には既に「グンゼタウンセンターつかしん」や「カルフール尼崎」などの大型店があるが、「百貨店やシネコンは現在市内になく、ニーズは大きいはず」とみる。
一方、伊丹市ではJR伊丹駅に接続するイオンモール伊丹テラスが昨年11月、大改装を終えてリニューアルオープンしたばかり。さらに、同市西部の工場跡地に同じイオングループが「伊丹西ショッピングセンター(仮称)」を計画している。現況はまだ空き地だが、売り場面積は約16万平方メートルの予定。イオンリテールは「伊丹市北部がターゲット。市場として魅力がある」と話す。
西宮市ではまた、「ららぽーと甲子園」敷地内にメキシコ生まれの職業体験施設「キッザニア甲子園」が建設中。東京都江東区の国内第1号施設は大変な人気で、関西初の出店が注目を集めている。
センターへの来館者には、元々クラシック音楽に縁が薄かった方も少なくない。ガーデンズ開業で地域に人が集まれば、そうした人たちがうちにも足を延ばしてくれるのではと期待している。また、音楽や演劇の観賞後に食事やショッピングを楽しめる場所が増えたことはうれしい。地域の人に支えられ、我々もガーデンズとともに育っていきたい。
キリンガーデンシティの開業で、市内外からも人が集まるまちになるだろうと楽しみにしている。JR尼崎駅北側はかつては工場が建ち並び、暗いイメージだったので、再開発は私たち住民にとっても悲願だった。商業施設などを目当てに集まった人たちを地元の商店街も取り込み、共存できるまちにしていきたい。
〔阪神版〕
毎日新聞 2009年1月1日 地方版