<日韓共同世論調査>技の日本、魂の韓国 「歴史」の隔たりと、若者に根付く親近感と

毎日新聞2009年1月4日(日)18:00

 技術力では日本人が勝り、精神力では韓国人が上――。毎日新聞と朝鮮日報(本社・ソウル市)の日韓共同世論調査では互いの長所に関する見方が一致した。日本では韓国に親しみを感じる人が約半数いるのに対し、韓国では日本に親しみを感じない人が6割を超え、過去の歴史問題を抱える両国に隔たりは残る。一方、若者間の意識の差は縮まっており、明るい展望がうかがえる。

 ◇「親しみ」に温度差 韓国では厳しい感情

 <Q1>

 相手国に「親しみを感じる」人は、日本は「大いに感じる」12%と「少し感じる」38%で、合わせて半数いたのに対し、韓国は「大いに」8%、「少し」28%で、3分の1強にとどまった。逆に「親しみを感じない」人は、日本は「あまり感じない」30%、「全く感じない」11%。韓国は「あまり」45%、「全く」17%。韓流ブームを経て韓国への好印象が定着した日本に対し、歴史認識や竹島の領有権問題もあって韓国では依然、対日感情が厳しいことが分かる。

 年代別で「親しみを感じる」と答えた人は、両国とも第二次世界大戦の記憶が残る70代以上で最も低く、日本は33%、韓国は24%。他の年代は、日本では20代から50代のすべての年代で50%を超え、60代も47%に達した。最も高かったのは40代の59%、次いで20代の58%。特に女性の間で親近感が強く、韓国ドラマに加え、韓国の男性ボーカルグループ「東方神起」が日本でも人気を集めていることなどが影響しているようだ。

 韓国では、30代から60代は30%台だが、19〜29歳は49%と半数近くに上った。Jポップなど日本文化の開放が影響したと言える。文化交流により、若者の間で互いに親近感が強まっていることは、日韓関係の未来に明るさを与えている。

 過去の調査と比較すると、日本は99年に48%だった「親しみを感じる」が、サッカー・ワールドカップ(W杯)を日韓で共催した02年に急増。開催前の02年1月は69%、開催後の同年7月は77%を記録した。今回はその急増分が失われた計算で、「熱しやすく冷めやすい」という日本人の特性がうかがえる。

 一方、韓国はW杯で盛り上がった直後の02年7月の42%からはやや減少したが、02年1月の35%は上回っている。95年26%、99年29%と比較して、わずかずつながら、対日感情は改善が見られる。

 ◇「長所」イメージ一致 日本の若者、「潜在能力」悲観的

 <Q2・3>

 日本人と韓国人を比較し、それぞれの最大の長所は何かを八つの選択肢を挙げて尋ねたところ、互いの見方はほぼ一致していた。

 日本人から見た韓国人の長所の上位は(1)「精神力」29%(2)「チャレンジ精神」11%(3)「勤勉性」10%。韓国人自身が考える長所のトップも「精神力」30%で、「チャレンジ精神」は4位(15%)、「勤勉性」は同率2位(18%)と同様の結果が出た。

 日本人の長所は両国で1位に「技術力」(日本31%、韓国29%)、2位に「勤勉性」(24%、15%)が挙がった。

 一方、日韓で評価が分かれたのは「潜在能力」と「順法精神」。韓国人の長所に韓国人の18%が「潜在能力」を挙げて高く評価しているのに対し、日本では4%にとどまっている。日本人の長所として韓国で3番目に多かった「順法精神」(13%)も、日本では3%どまり。

 自国の潜在能力に関しては年代別で差が大きかった。日本人で日本人の長所として挙げた人は、60代で11%、50代で10%あったが、20代0%、30代4%、40代2%と若い世代で低かった。

 逆に韓国で韓国人の長所として挙げた人は19〜29歳で24%、30代20%、40代19%、50代16%、60代12%と若い世代ほど多い。未来に希望を持つ韓国と、明るい展望を持てない日本という、若者の意識の差が浮かぶ。

 また、韓国に親近感を持つ日本人は、韓国人は礼儀正しいと感じている人が多かった。韓国に「親しみを感じる」と答えた日本人で、韓国人の長所に「礼儀正しさ」を挙げたのは15%。「感じない」人の3%を12ポイント上回った。

 韓国側では、日本に「親しみを感じる」人で日本人の「親切心」を挙げた人は16%で、「感じない」人より7ポイント高かった。

 ◇東京五輪は「支持」ほぼ同数 2020年には釜山も名乗り

 <Q4>

 東京都は2016年の夏季五輪招致を目指し、韓国では釜山市が2020年夏季五輪誘致を狙っている。2大会連続で東アジアで開催される可能性は低いため、東京開催が決まれば釜山市にはマイナス要因となるが、東京五輪開催を支持するかとの質問に対し、韓国で46%の人が「支持する」と回答。不支持の39%を上回った。

 日本では「支持」50%、「不支持」37%で、韓国と大差がなかった。世論の支持は国際オリンピック委員会(IOC)が開催地を決定する基準の一つだが、開催を希望する国内での支持が隣国とほぼ同じという結果で、東京への強い追い風は吹いていないようだ。

 韓国の回答を、日本に親しみを「感じる」と答えた人と、「感じない」と答えた人に分けて東京五輪の賛否を見ると、「感じる」人では支持が61%と多数を占めた。逆に「感じない」人は、不支持が46%で支持の38%を上回った。日本への親近感の有無が、東京五輪に対する姿勢にも大きく反映していることが分かる。

 ◇対北朝鮮外交 日本「圧力」派優勢、韓国「対話」派圧倒

 <Q5>

 北朝鮮の核開発問題を解決するために自国政府はどのような対応を取るべきか、「圧力を強めるべきだ」と「対話を重視すべきだ」の二者択一で聞いたところ、日本の方が圧力派が多いことが浮かび上がった。未解決の拉致問題は両国に共通した課題だが、日本の方が拉致問題が進展しないことに批判的なことがうかがえる結果となった。

 日本は圧力派が46%で、対話派の39%を上回った。これに対し、韓国は圧力派は23%にとどまり、対話派が75%を占めた。日本では同様の質問をした08年1月の調査と比べ、対話派が横ばい、圧力派が8ポイント減少したが、なお韓国の世論との開きは大きかった。

 それぞれ年代別に見てみると、日本では50代の55%、60代の52%が圧力派。逆に20代は対話派が51%と突出しており、年代による拉致問題重視の度合いの差がうかがえた。

 韓国は年代別の差がほとんどなく、幅広い年代で対話派が多数を占めていることが浮かんだ。

 男女別では、日本の男性は圧力派55%、対話派34%で、女性は圧力派40%、対話派42%と数字が逆転した。

 韓国は男性の71%、女性の79%が対話派で、やはりともに対話への期待が大きいことが分かった。

 ◇オバマ政権 関係好転に期待 韓国60代以上は7割

 <Q6>

 「CHANGE」を掲げるバラク・オバマ氏が20日、第44代米大統領に就任する。「変革」は米国の対日政策、対韓政策に影響を与えるのだろうか。

 今後の対米関係について、日韓とも「大変良くなる」と「少し良くなる」を合わせ、好転を期待する市民が「少し悪くなる」と「大変悪くなる」を大きく上回った。ただ、両国とも「大変良くなる」は1ケタ台だった。

 それぞれの対米関係と結びつく北朝鮮の情勢が不透明なことや、オバマ氏の貿易政策が不明なことから、過度に期待せず冷静さを併せ持っているようだ。

 日本は「大変良くなる」4%、「少し良くなる」45%。「少し悪くなる」27%、「大変悪くなる」3%で、好転すると予測する人と、悪化するとみる人の差は19ポイント。年代別で好転派の割合が最も高かったのが20代の68%だった。50代だけが悪化するとみる人44%に、好転派は36%で割合が逆転した。

 一方、韓国では好転すると予測する人は悪化するとみる人の2倍以上の63%に達し、日本より差が開いた。どの世代も好転派の方が多いが、比率が最も高かったのが70代以上で71%、60代の70%が続く。日本からの独立(1945年)前後を知る世代は米国への親近感も強い。逆に、悪くなると予測するのは40代(38%)、30代(36%)が目立ち、社会の中核の世代は見方が厳しい。

 ◇米国「好き」双方6割

 <Q7>

 米国の同盟国である日本と韓国。第二次大戦後、日韓ともに米国の影響力は政治的にも、社会的にも大きかった。米国に対する好感度は、日韓とも「好き」と答えた人が「嫌い」と答えた人を大きく上回った。

 日本は全体で「とても好き」5%、「ある程度好き」58%で、合わせて63%だった。男女別では「好き」が男性64%、女性63%で、「嫌い」は男性26%、女性21%で性別に関係なく、傾向がほぼ似ている。「嫌い」の割合を年代別にみれば、学生時代に「反米運動」を経験した世代の50代だけが3割に達した。次いで20代が27%だった。

 一方、韓国は対米感情が二極化する傾向が見られる。「とても好き」14%(日本5%)、「とても嫌い」8%(同4%)で、日韓で意識の差が際立った。年代別にみると、「とても好き」「ある程度好き」を合わせ、好感度を示した回答の割合が最も高かったのは70代以上の76%。逆に「嫌い」が最も多かったのは、ずっと年代が下がった30代で、過半数の53%だった。

 ◇景気回復は 日本全年代、暗い見通し

 <Q8>

 「あなたは、自国が今後1〜2年の間に世界金融危機による経済の低迷から抜け出し、景気が回復すると思いますか」――。日韓両国ともに「いいえ」が多数となったものの、日本の世論の方がより悲観的にとらえていることが分かった。日本が「はい」が21%、「いいえ」が65%だったのに対し、韓国は「はい」が48%、「いいえ」が51%と拮抗(きっこう)した。

 年代別に見ると、日本は20代から70代以上のすべての年代で「はい」は20%前後にとどまり、全体的に暗い見通しで一致した。

 一方の韓国では、「はい」という回答が30代以下では30%台にとどまったのに対し、40〜60代は50%台、70代以上になると78%を占め、年齢層が上がるに従って楽観論が広がっていることが浮かんだ。韓国は過去に何度も経済危機を経験していることから、それを乗り越えてきた層ほど「今回も大丈夫」と考える傾向がうかがえる結果となった。

   ◇

 この特集は、西脇真一(ソウル支局)、大谷麻由美(政治部)、山口昭、田村佳子、福田昌史(世論調査室)が担当しました。

………………………………………………………………………………………………………

 ◇質問と回答◇

          日本 韓国 日本男 韓国男 日本女 韓国女

Q1・韓国【日本】に親しみを感じますか

大いに感じる    12【 8】 12【11】  13【 6】

少し感じる     38【28】 38【27】  39【29】

あまり感じない   30【45】 33【41】  27【48】

全く感じない    11【17】 12【19】  11【15】

Q2・韓国人の最大の長所は何だと思いますか

勤勉性       10【18】  6【20】  13【17】

精神力       29【30】 38【27】  23【34】

潜在能力       4【18】  5【18】   3【17】

技術力        2【 5】  3【 4】   2【 5】

礼儀正しさ      9【 5】  7【 5】  11【 6】

親切心        4【 3】  3【 3】   4【 2】

チャレンジ精神   11【15】 10【17】  12【13】

順法精神       4【 2】  3【 1】   4【 2】

Q3・日本人の最大の長所は何だと思いますか

勤勉性       24【15】 26【15】  23【15】

精神力        5【 8】  4【 8】   6【 9】

潜在能力       5【 2】  6【 2】   4【 2】

技術力       31【29】 29【32】  32【25】

礼儀正しさ      8【11】  9【 8】   7【13】

親切心        5【11】  5【10】   5【13】

チャレンジ精神    2【 6】  2【 6】   2【 7】

順法精神       3【13】  4【14】   2【12】

Q4・東京都は2016年の五輪開催に名乗りを上げ、韓国の釜山市が2020年の開催を誘致しようとしています。東京の五輪開催を支持しますか

支持する      50【46】 51【48】  49【45】

支持しない     37【39】 41【38】  34【41】

Q5・北朝鮮の核開発問題を解決するために、日本【韓国】政府は、どのような対応を取るべきだと思いますか

圧力を強めるべきだ 46【23】 55【27】  40【18】

対話を重視すべきだ 39【75】 34【71】  42【79】

Q6・09年1月、米国の大統領にオバマ氏が就任します。オバマ大統領によって日米【韓米】関係が良くなると思いますか

大変良くなるだろう  4【 9】  5【11】   4【 8】

少し良くなるだろう 45【54】 40【51】  49【57】

少し悪くなるだろう 27【28】 34【31】  21【26】

大変悪くなるだろう  3【 2】  3【 2】   3【 2】

Q7・あなたは米国をどのくらい好きですか

とても好き      5【14】  6【16】   5【12】

ある程度好き    58【44】 58【44】  58【45】

少し嫌い      19【33】 21【30】  18【35】

とても嫌い      4【 8】  6【10】   3【 5】

Q8・日本【韓国】が今後1〜2年の間に、世界金融危機による経済の低迷から抜け出し、景気が回復すると思いますか

はい        21【48】 23【49】  19【46】

いいえ       65【51】 66【50】  64【53】

 (注)数字は%、小数点以下を四捨五入。その他、無回答は省略。【 】内は韓国での設問。「日本」は日本全体、「韓国」は韓国全体、「日本男」は日本男性、「韓国男」は韓国男性、「日本女」は日本女性、「韓国女」は韓国女性の回答データ。

 <調査の方法>日本ではコンピューターが無作為に選んだ電話番号を使うRDS法で、12月6〜7日に電話をかけて調査し、有権者のいる1615世帯から1031人の回答を得た。韓国では電話番号簿から無作為に抽出し、同月20〜21日に電話をかけて調査し、1052人の回答を得た。

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