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社説:通常国会開会 定額給付金は切り離せ

 通常国会が5日開会した。衆院議員の任期満了を9月に控え、国会は絶えず衆院解散・総選挙をにらんだ展開となる。当面のテーマは08年度第2次補正予算案だが、これに盛り込まれた定額給付金をめぐり早くも与野党の対立が激しくなっている。

 麻生太郎首相は4日の年頭会見で「急ぐべきは景気対策。まずは予算案と関連法案を早期に成立させることが重要だ」と強調した。景気悪化が深刻になる中、国会を早期に開いたのも経済対策を急ぐ必要があるからだと言いたいのだろう。

 だが、忘れてはならない点がある。緊急性をいうのなら、なぜ、昨年の臨時国会に2次補正を提出しなかったのかということだ。

 首相や与党は野党に追い込まれて衆院解散に至るのを恐れ、2次補正を先送りし、政府方針とほぼ共通している民主党の雇用対策案にも反対に回った。それが一転、「早期成立を」「野党も協力を」と野党に責任を転嫁し、態勢を立て直そうというのは、虫がよすぎるというものだ。

 野党の主張に少し耳を傾けてはどうか。民主党などは5日、定額給付金を2次補正から切り離すよう求めた。最も緊急性を要する雇用対策など他の対策については野党も早期成立に向け協力するということだ。

 ところが自民党は提案を拒否した。野党は給付金を分離した修正案を共同提出するという。この結果、国会はいきなり前に進まなくなる可能性が高い。

 毎日新聞は当初から定額給付金は目的や効果が定かでなく、同じ2兆円ならもっと別の使い道を考えた方がいいと主張してきた。

 河村建夫官房長官は「給付金は家計では織り込み済み」と既に給付を前提に家計を考えている国民が多いと言う。しかし、これも開き直りというべきだ。

 世論調査では給付金に賛意を示す国民は少ない。足元の自民党内でも、給付金撤回などが受け入れられなければ離党すると表明した渡辺喜美元行政改革担当相だけでなく、公明党主導で進められた給付金に本音では賛成していない議員が少なくないのが実情なのだ。

 最悪なのは、この問題で与野党が対立し、雇用対策が遅れる事態だ。まず、ここは首相と与党が譲り、給付金分離に応じるべきだ。

 首相は会見で09年度予算が成立するまで衆院を解散する考えがないとも明言し、解散を条件に予算成立への協力を民主党に求める「話し合い解散」の可能性も否定した。

 早期に有権者の信を問う一方で緊急の経済対策も進める。双方を両立させるためには「話し合い解散」も一つの方法と考えるが、首相はこれにも聞く耳を持たないようだ。

 支持率低下が続く首相だ。その現実を無視するかのように強気一辺倒でいては、ますます自らの首をしめることになるはずだ。

毎日新聞 2009年1月6日 0時10分

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