近年、家庭内や介護施設内において、高齢者に対するさまざまな権利侵害(いわゆる虐待)の報告が増えています。介護殺人などが社会問題としてメディアに取り上げられるようになり、06年に高齢者虐待防止法が施行され、表の五つの状態を虐待として規定しました。
この法律では虐待、もしくは、虐待が疑われる状況を発見した際、市町村に通報するように努力するとしています。通報を受けた市町村は、虐待の疑いがある高齢者宅を訪問調査し、場合によっては立ち入り調査する権限が与えられています。
厚労省の調査では、虐待の相談・通報件数は07年度の1年間に全国で約2万件でした。相談・通報者で一番多かったのはケアマネジャーと介護サービス事業所の職員、次いで家族・親族、そして、虐待を受けている高齢者本人からの通報が3位に続きます。その中で、虐待であると判断された事例は約1万3000件でした。虐待の内容で一番多かったのが身体的虐待、次いで心理的虐待、介護放棄・放任と続きます。一つの事例において複数の虐待が行われていたケースもあります。
被虐待者からみた虐待者の続柄は「息子」が全体の約40%と最多で、次いで「夫」でした。被虐待者と虐待者が同居していた事例は全体の約85%で、別居していた事例は約11%でした。
高齢者虐待の対処については次回にお話しします。(財団法人浅香山病院医療福祉相談室精神保健福祉士、仲西宏太郎)
毎日新聞 2009年1月5日 大阪朝刊
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