正月の東京・国立劇場は中村芝翫(しかん)らの出演による珍しい狂言の三本立てを上演中。そのうちの一本の歌舞伎十八番物「象引」で、昨年7月以降、病気療養のため舞台を休んでいた市川團十郎(だんじゅうろう)が本興行に復帰を果たした。
「象引」は正義の味方の主人公と悪人が象を引き合うのが趣向。七代目團十郎が「歌舞伎十八番」に加えた。
大正時代に二代目市川左団次が創作台本で舞台化し、1933年に市川三升(十代目團十郎)も新脚本で復活させた。近年では82年に二代目尾上松緑が上演。今回は過去の舞台を参考にした新脚本での上演となる。
主人公の箕田源二猛(みたのげんじたける)を演じる團十郎は「昨年7月に造血幹細胞移植の手術をし、経過も順調です。『象引』は芝居絵をヒントにいたしました。今までは、かわいらしい象を使っていたようですが、今回は怖い象にしています。それを猛が引いて入る。輸血で得たパワーをお客様にお分けしたい」。
「十返りの松」は1928年に発表された箏曲(そうきょく)。歌舞伎では初演で、芝翫が振り付け、山田流箏曲の山勢松韻が演奏する。芝翫の長男の福助、次男の橋之助、その子の国生、宗生、宜生が顔をそろえている。芝翫は「子供や孫と同じ舞台に出られるのはうれしい。若返ってやらせていただきます」。
最後は「〓競艶仲町(いきじくらべはでななかちょう)」。鶴屋南北による「双蝶々曲輪日記(ふたつちょうちょうくるわのにっき)」の書き換え狂言。活字化されておらず、久々の上演だ。坂東三津五郎の与兵衛、福助の都、橋之助の与五郎。
公演は27日まで。問い合わせは0570・07・9900へ。【小玉祥子】
毎日新聞 2009年1月5日 東京夕刊