市川海老蔵が東京・新橋演舞場の正月公演で、昼夜の5演目に出演中だ。「昨年は歌舞伎をやろうと決めていました。初役を一番たくさんやったのが僕じゃないかな。旧暦で考えているので、まだ年が改まっていないんです」
というわけで初役が多く、それも大役ぞろい。昼の「義経千本桜」では、いがみの権太。忠信、知盛は経験済みで、主要3役をすべて演じたことになる。
「ならず者の権太は根が優しく、機転も利くけれど、それを裏の方向に見せてしまう。自分に近く、一番共感できる役です。初役で大変なのは商品として出さなければいけないところ。初演でうまくできる役者はいない。必死になっています」
夜では歌舞伎十八番物の「七つ面」を復活させた。「暫(しばらく)」の鎌倉権五郎や関羽、女らを、次々と面を替えて踊り分ける。「奇をてらわずに古風な立ち役の踊りを作りたいと思いました」
国立劇場では病気から復帰した父の團十郎が、やはり十八番物の「象引」を復活上演中だ。「どんどんやってもらいたい。2人でやれば、たくさん復活できます。神様は父に生きろ、と言っているんだと思います」。父の病気回復を願い、昨年10月から好きな酒を断っているそうだ。
昼はさらに「口上」で市川團十郎家独特の「にらみ」を行い、「お祭り」も踊る。また夜の「白浪五人男」の弁天小僧は98年以来。「久々なので、初役と同じですよ。よくできた華のある狂言だと思います」
公演は27日まで。問い合わせは03・5565・6000へ。【小玉祥子】
毎日新聞 2009年1月5日 東京夕刊